弊社は、このような重大な瑕疵が存在することから、大津京ステーションプレイスの工事が完成しているか否かについては、主要構造部分が約定どおり施工されているかどうかのほか、それが建築基準法上も適法として是認されるかどうかも含めて完成の有無を判断するべきであることを過去の判例と照らし合わせて下記のように主張しています。
[控訴審 第3準備書面より抜粋]
「1 既に控訴理由書において述べたとおり、請負契約における仕事完成時期については、「最後の工程を終えているか否か」を基準とすべきとされている(東京高判昭和36年12月20日(判例タイムズ127号52頁、判例時報295号28頁)。
そして、この「最後の工程を終えているか否か」は、請負者が主観的に最後の工程まで終えたと考えただけでは足りず、構造面や用途面からみて重要な部分が約旨にしたがって施工されており、社会通念からみて、契約内容に照らして各工程を終えていると判断することができることを必要とする。
この点について、東京地判平成3年6月14日(判例時報1413号78頁)は、「専ら請負工事が当初予定された最終の工程まで一応終了し、建築された建物が社会通念上建物として完成されているかどうか、主要構造部分が約定どおり施工されているかどうかを基準に判断すべき」としており、また東京地判昭和48年7月27日(判例時報731号47頁)も、「建築請負契約の場合、建築された建物が社会通念上建物として完成されているかどうか、主要構造部が約定とおり施工されているかどうかのほか、それが建築基準法上も適法として是認されるかどうかも含めて完成の有無を判断すべき」である旨判示している。
2 かかる観点から本件建物をみると、上記のとおり、本件建物の基礎の構造耐力はゼロに等しく、構造耐力上の安全性が全く確保されていないこと、および建築基準法令に違反して水セメント比発注方式によるコンクリートが広範な構造躯体部分に使用されていることからすれば、本件建物は主要構造部が約定(建築基準法令の規準に従って施工するというのは請負契約の基本的な約定である。)とおり施工されていないことは明らかであり、かつ建築基準法上も適法として是認することは到底許されないものである(なお、この二つの重大な瑕疵だけでなく、外にも本件建物が完成していないことを基礎づける多数の瑕疵や手続上の法令違反があることについては控訴理由書57頁以下に述べたとおりである。)。
したがって、本件において仮に一部引渡が終了していたとしても、上記二つの重大な瑕疵が存在することだけでも本件工事は未だ完成しているとはいえないのである(滝井繁男「逐条解説 工事請負契約約款」226頁)。
3 そうすると、本件請負契約は被控訴人南海辰村の債務の履行が未だなされていないということができ、責務不履行を構成するといわなければならない。そして、本件建物がおよそ安全に補修を行うことなどできず、既施工部分の給付について何ら現存利益などないことは既に述べたとおりであって(平成25年7月16日付控訴理由書58~59頁)、被控訴人南海辰村は控訴人に対し、控訴人が支払い済みの3億9060万円を返還した上で本件建物を収去し、同建物収去までに控訴人が被ったその他の損害も賠償すべきである。」
つまり、大津京ステーションプレイスの場合、主要構造部である基礎梁が約定どおり施工されておらず(請負契約の約定である契約図面では、基礎梁コンクリートをバラバラの分離状態にするようにはなっていない)、さらに主要構造部である基礎から11階床までの柱・梁・床・壁には、建築基準法に違反する水セメント比発注のコンクリートが使用されているのであるから、基礎から11階床までの主要構造部は、建築基準法から見て適法と是認することはできません。
このようなことから、大津京ステーションプレイスは未だ完成しているとは言えないことは明らかなのです。
未だに工事が完成していないとなると、大津京ステーションプレイスの請負契約は、南海辰村建設の債務の履行が未だに出来ていないということになり、債務不履行を構成していることになります。
弊社は、すでに控訴理由書において、大津京ステーションプレイスの建築請負契約を債務不履行解除しており、債務不履行解除の範囲は本件建築請負契約全体に及ぶこととしているので、南海辰村建設は、大津京ステーションプレイスを収去したうえで、同建物を収去するまでに弊社が被ったその他の損害も賠償するべきなのです。
(社員S)