マンション購入者が、建築士などのホームインスペクターを同行して内覧会に臨まれるケースがよくあります。今回は、マンション内覧会同行程度の検査では、建物全体としての重大な構造欠陥等の有無を判断することは不可能であることについてお話ししたいと思います。
なぜ内覧会同行検査では、構造欠陥は見つけられないかについて説明します。マンションは一つの建物を区分共有するものです。構造耐力上の重大な欠陥等を判断するには、一住戸としてではなく、ひとつの建物全体としてどうなのかということを調査して行かないとなかなか判断できないのです。
例えば、大津京ステーションプレイスのように、屋上に約250トンもの余分な増し打ちコンクリートが存在することや基礎梁の打継部が一体化していなくて分離状態になっているような欠陥(瑕疵)などは、内覧会同行検査では絶対に分かりません。
仮に、ある階のある一住戸を内覧会時に構造躯体まで検査できたとしても(仕上げができている状態では不可能だと思われますが)、その住戸の隣接住戸(両隣、上下階住戸)がどうなっているかまでは判断できない訳です。
ある内覧会同行業者のホームページを観ていると、「壁の中の構造など、見えない箇所の調査も行うのですか?」という質問にたいして、「非破壊検査なので見えない部分の確認をすることはできません」と回答されていました。
すごく道理に合った回答だと思いますが、この回答からもお分かりになるように隠蔽部分(構造体)までは、内覧会では調査できません。
もちろん、日常生活に直結するような床の傾きや給排水設備の不具合など内覧会でも調査できる箇所はありますから、内覧会で同行検査してもらうことは意味がないことではありません。
しかし、上述しましたように、内覧会では調査できないような重大な構造耐力上の欠陥があった場合、地震などの災害が起こり、被害に遭って初めて気付くことになるという大きな問題を抱えています。
つまり、完成した建物(マンション)をいくら調査しても、構造耐力上の欠陥は調査することが難しく、仮に発見できたとしても元の状態に修復することは困難な場合が多いのです。
それでは、どうすればいいのか・・。
その答えは、やはり欠陥のない建物(マンション)をきちんと建ててもらうという原理原則に尽きると思います。
造り手(建設会社)にモラルがなく、本気で欠陥や手抜き部分を巧妙に隠蔽されれば、いくら専門家が調査しても分からない(見抜けない)部分もありうるというお話を大津京ステーションプレイス訴訟に協力してくださっている専門家の方から聞かされたことがあります。
ですから、欠陥が見抜ける・・見抜けられないという以前に、当たり前のことですが、欠陥のない建物(マンション)を建ててもらうこと。言い替えれば、欠陥建物(マンション)をなくすことが一番の解決策になるということです。
どうすれば、欠陥建物をなくすことができるのか・・ということについては、以前のブログ記事でも少し触れていましたが、これだけ欠陥建物が社会問題になってきている現状からすれば、欠陥建物をなくすための仕組みや制度を建設業界だけでなく、社会全体として考えていく必要があると思います。
(この問題は、根深いところがあるので、またの機会にお話ししていきたいと思っています。)