南海辰村建設が大津京ステーションプレイスの屋上に約250トンもの余分なコンクリートを増し打ちしていたことについて、あまりにも常識を逸脱した施工であることを建築裁判に詳しい一級建築士の方が控訴審の意見書で述べています。今回は、その意見書を紹介したいと思います。
一級建築士の意見書(抜粋)より
言うまでもなく、構造計算でNG(※)とならなければ何をしても良いというものではないが、ここで注目しなければならないのは、南海辰村建設は本件裁判手続の中で初めて追加荷重を前提とした構造計算を行ったことである。これは、現場施工時点では安全性を確認していなかったことに他ならない。更に言えば、追加荷重の影響を懸念しなかった可能性すら否定できない。
膨大な量の増打は、構造専門家でなくとも看過できない事柄であり、それを、詳細な検討も行わないまま施工するなど、建築工事業者としてあってはならない仕儀(しぎ)である。仮に、構造計算でNG(※)とならなかったとしても、それは偶然NG(※)とならなかっただけのことで、偶然の結果でしかない。
このような「なりゆきまかせ」の施工が、本件工事請負契約の前提となっていたはずがない。
問題としている追加荷重は原審で明らかになった事柄であって、訴訟が無ければ秘匿(ひとく)され続けただけだろうし、始末の悪いことに(あまりにも常識外れの施工だから)、誰も気付なかった可能性が極めて高い。設計図書の内容を大きく逸脱した「アタマデッカチ」の屋根スラブなど、常識的には想定し得ない。
本件建物に完了検査済証を発行した確認検査機関にしても、この追加荷重施工の情報がもたらされておれば、(その情報を得たとしても「まさか!?」で終わった可能性も否定できないが)少なくとも検査が申請された時点で再計算等が指示されたであろう。これが竣工直前であったとすれば、即、竣工の遅れを招いてしまうから、秘匿(ひとく)せざるを得なかったのかもしれない。南海辰村建設は、巨大な増し打ちを秘匿(ひとく)して検査済証を取得したのである。
分譲マンションの屋上には、過去には広告塔が多く立てられたし、最近では太陽光発電パネルが設置され、或いは屋上緑化も人気を博している。これらはいずれも積載荷重の追加に他ならないから、当然にマンション管理組合は、構造計算に基づいて追加荷重の可否を検討するが、その際に、既存の追加荷重250tonの存在など考慮できようはずが無い。
もし本件訴訟が無く、普通に引き渡されてマンション管理組合の管理下に入り、屋上の追加荷重になる改修工事を企図したことを想定すれば、これまた足がすくむ思いである。
百歩譲って、仮に250tonの追加荷重を前提としても本件建物の安全性に問題が生じないのであれば、設計図書どおりに施工しておれば、更なる安全性や余力が見込まれたはずで、施工者の都合による変更がこれを奪い去ったのである。
敢えて再度述べるが、建築物の構造の安全性は、構造計算によってNG(※)が出なければ良いというものでは決して無い。
本件屋根スラブにおいて、異常ともいえる増打を施工した事はそれだけでも「もってのほか」であるが、その安全性の検証すら懈怠(けたい)したまま施工し、これを秘匿(ひとく)して分譲開始に臨んだ施工者の責任は、非常に大きい。
一級建築士の意見書(抜粋)以上まで
(※)上記意見書中に「構造計算によってNGとならなかった」という表現がありますが、控訴審においては、発見された欠陥をすべて考慮して構造再計算を行った結果、法定耐力を大きく下回っておりNGとなっています。
紹介しました意見書からは常識ある一級建築士の方の憤りすら感じられます。それだけ常識を逸脱した施工だという事がうかがえます。
南海辰村建設は、自分たちが行った大罪を正当化するような言い訳ばかり考えるのではなく、事実を認め問題解決に向けて責任ある行動をとってほしいものです。
(社員F)
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