エピソード8(裁判が始まって6年が経過、やっと大阪高裁の裁判官が現場を見に来ました)
先月9月15日に大阪高等裁判所の裁判官が大津京ステーションプレイスの現場を見にきました。
その目的は、控訴審で現在争点になっている本件マンション基礎部のコンクリート打継ぎ部について、裁判官、専門委員の立会いの下、大覚側、南海辰村建設側がそれぞれ問題の打継ぎ部のコンクリートコアを数箇所抜き取り、打継ぎ部のコンクリートが一体化しているかどうかを検証することです。
本件マンションの施工において、南海辰村建設によるコンクリート打継ぎ部の打設は適正な方法で行われていません。したがって打継ぎ部のコンクリートは一体化していません。通常ならば抜き取ったコンクリートコアが打継ぎ面から分離することはありません。しかし、本件マンションは、建物の基礎部、各階の床面で一体化しておらず、コンクリートが分離しています。
コンクリートが分離しているとはどういうことなのか説明します。積み木を3個積み重ね、その上にマッチ箱を14個積み重ねたとします。積み木は一体化していない基礎部のコンクリート、マッチ箱はコンクリート建造物として1階から14階まで一体化していない各階の例えです。マッチ箱や積み木はくっついてはおらず、積み重ねただけなので、すこしの揺れでずれが生じ、たちまち崩れてしまいます。
当日は、裁判官、専門委員に問題の立体駐車場地下ピットに降りていただきました。そして、裁判官の目の前で水平打継ぎ部、垂直打継ぎ部のコンクリートを抜き取り、抜き取ったコンクリートコアを保管室に運び、打継ぎ部で割れるかどうか、裁判官、専門委員、大覚関係者、南海辰村建設関係者の見守る中で検証しました。
私は、大覚の立会人の1人として、南海辰村建設側の最初のコンクリートコア抜き取り作業を見守りました。20分もすると、音を立てて回転していたコンクリートコアドリルの動きが止まり、立体駐車場地下ピットの壁から長さ約54cm、直径約8cmの筒状のコンクリートコアドリルが抜き取られました。すぐにコア抜き作業者はコンクリートコアを筒状のドリルの中から取り出し、南海辰村建設の担当部長に渡しました。
弊社が裁判で証拠提出した割れた(分離した)コンクリートコアについて、「大覚のコア抜き取り方法に問題があるから割れたのだ」と主張していた南海辰村建設の担当部長は、コンクリートコアを受け取るとすぐに、
「はい、割れて出てきていません。割れて出てきていませんね」
と勝ち誇った様子で言いました。さらに、頑丈なコンクリートであることを示すかのように、両手でコンクリートコアを揺さぶって、「割れていませんやん!」と繰り返しました。
担当部長のいかにも芝居じみた動きを不審に思い、そのコンクリートコアに目を凝らしてよく見ると一筋の亀裂がコンクリートコアの打ち継ぎ目に沿ってはっきりと見えました。
「ちょっと待て、こんなにはっきりとヒビが入っていて何が割れてないだ!」
と、私はその亀裂を指差して言いました。すると、担当部長は私に背を向け、亀裂を隠すような仕草をしました。
「もう嘘をつくのはやめてください!」と私が言うと、後ろの方から「ここは評価する場ではありません」と南海辰村建設側の弁護士が言うのが聞こえました。
もともと「割れて出てきていません」などと、コンクリートコアを抜き取った途端、いきなり言い出したのは南海辰村建設側なのに、都合が悪くなると正面から相手と向き合わず、隠蔽して逃げ出そうとするいつもの南海辰村建設の企業体質を垣間見る思いがしました。
怒りを抑え、冷静に努めねばと、私は傍らにいた弊社の弁護士に証拠の写真を撮ってくださいと言いました。弊社の弁護士がその亀裂を撮影している最中に、そのコンクリートコアの亀裂は、担当部長の手中でかすかに開き、打継ぎ面で割れているのが見えました。
担当部長は、すぐに2つに割れたコンクリートコアをあたかも一体化しているように、再び両手でしっかりと押さえました。しかし、弊社の弁護士から「割れましたね」と言われ、続いて(証拠写真を撮るために)、「開いて見せてください」と言われると、観念したように、しっかり押さえていたコンクリートコアを開き、その場にいた一同に見せました。
「これを割れていないと言うのか!!」
と私は思わず声を荒げました。
「割れてませんやん!」と言って、割れているコアを両手で
押さえて割れていないように見せかけている担当部長
しかし、実際はコンクリートコアは割れていた
立体駐車場地下ピットから地上に出ると、担当部長は割れたコンクリートを抱え、検証のために用意した保管室に運び、床に敷いたシートの上に、割れて2つに分離したコンクリートコアを並べて置きました。
最初のコンクリートコアが壁から抜かれた直後に打継ぎ面から割れたためか、南海辰村建設は2本目のコンクリートコアからは、コアドリルを壁から抜くと、筒状のコアドリルごと保管室に運びました。保管室に到着すると、コア抜き作業者はコンクリートコアをコアドリルから抜き出し、そうっと床のシートの上に置きました。ところが、打継ぎ目を確認するために、居合わせた一人が指先でコンクリートコアを数センチ横に転がして傾けた途端、あっという間に打継ぎ面で2つに割れ、それぞれゴロン、ゴロンと右に左に揺れて止まりました。
「割れる」という言い方は、ここでは適切ではないかもしれません。もともと分離している2つのコンクリート層が上下に重なる部分を抜き取ったのですから、重ねた積み木が横にずれるように、打継ぎ面が傾いて、抜き取ったコンクリートコアの上の層が重力によって打継ぎ面で横にずれ、2つに分かれてしまったのです。
南海辰村建設は本件マンションのコンクリート打設において、打継ぎ面の処理をしておらず、そのためレイタンスの層(脆弱な膜層)が打継ぎ面に形成され、一体となるべきコンクリートが打継ぎ面で分離しているのです。
3本目のコンクリートコアも2本目と同様、保管室の床のシートに置かれて間もなく、指でつついただけで2つに分離しました。
4本目のコンクリートコアは、保管室で、裁判官、専門委員、大覚関係者、南海辰村建設関係者が見守る中、コア抜き作業者がコンクリートコアドリルからコンクリートコアを抜き出して、シートの上に置いたと同時に、ゴロンと転がり、2つに分離してしまいました。一瞬のことでした。
この日、南海辰村建設が抜き取った水平打継部のコンクリートコアは4本とも打継ぎ面で分離していました。
南海辰村建設が抜き取ったコンクリートコアは
4本とも打継ぎ面で真っ二つに割れた
大覚側がこの日、抜き取ったコンクリートコアは水平打継部3本、鉛直打継部2本、各階床面の打継部2本および屋外階段部2本の合計9本でしたが、全て打継ぎ面から分離していました。
大覚側は合計9本のコンクリートコアを抜き取った
全て打継面で割れた
これらに加えて、これまで弊社が本件マンションのコンクリート打継部を調査するために抜き取った50本近くのコンクリートコアも全て打継ぎ面で分離していることが判明しています。
本件マンションは、上から下までコンクリートが一体化しておらず、極めて危険な建物です。例えれば、洋服の仕立屋(テーラー南辰)が型取りした生地を仮縫いして繋げただけのスーツがあったとします。テーラー南辰はきちんと最後までスーツを仕上げずに顧客(大覚)に売りつけたのです。
コンクリート打設において適切な打継ぎ面の処理をしていなかったために、大津京ステーションプレイスは、本縫いをしていないスーツがやがてほころびてしまうように、地震などの衝撃で崩れてしまうかもしれません。
南海辰村建設は、これまでの裁判で弊社が証拠提出した割れた(分離した)コンクリートコアについて、「大覚のコア抜き取り方法に問題があるから割れたのだ」と主張していました。つまり、南海辰村建設の提示する方法で打継部のコンクリートコアを抜き取れば、コアは割れない(分離しない)と主張していたのです。
しかし、今回の現場検証では、南海辰村建設の提示する方法で南海辰村建設自らがコアを抜き取ったところ、4箇所全てにおいてコンクリートコアが真っ二つに割れ、分離しました。このことは、「コンクリート打継部が一体化していない事実を南海辰村建設自らが裁判官の目の前で証明した」ということであり、それ以外の何物でもありません。
このような状況になっても、南海辰村建設は「本件建物には瑕疵はない」と言えるのでしょうか。
南海辰村建設は、もうこれ以上嘘をつくのを止めて、本件欠陥マンション問題の抜本的解決に向けて、企業としての責任を果たすべきだと、弊社は考えます。
次回のブログ記事は裁判官立会いによる現場検証の続編を予定しています。楽しみにお待ちください。
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コメント
この裁判の経過を注視したい。
南海辰村は確実に仕事が無くなる施工管理だよなあ、南海辰村なんかインチキだぜ。
住民の方々には早く安心できる場所に住んで頂きたいですね。
それにしても、裁判所や役所は何やってんだろ? 腹立たしい。
こんなことに何年も時間を掛けてるなんて。
結果は一目瞭然じゃないの? って思わざるを得ません。
横浜の件の方は迅速に対応始めてるように見えますが。
関係者の方々、がんばって下さい。
今横浜でも欠陥マンションの騒ぎがあります。
その少し前からこちらのブログを拝見させていただいております。
こんなに悪質な業者もいるんですね・・・。
ぜひ裁判で勝訴することをお祈りいたしています。