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屋上には無数といえるほどの通気管が立ち上がっている。排水通気立ち上がりには防水層端部を保護するカバーが無く見積要綱書と相違する鋼管が用いられ、それが激しくさびており、鋼管と立ち上がり塩ビ管との間には大きな隙間があり、その隙間のコーキングのバックアップには電線管が転用され、ベントキャップは単なる嵌合固定である。
屋上の通気管
重力式(自然落下式)の排水設備で、排水管の末端が開放されていないと、多量に排水した際に、排水管内部に生ずる空気の圧力差でトラップの封水が切れることがある。これを防止するため、排水管を延長してその末端を大気中に開放して空気を取り入れる手法を採り、「排水通気」と称される。
※ 封水:排水管の排水口近くにU型やP型の曲がりを設け、そこに水が溜まることによって悪臭の放散を防ぐ。
ⅰ.見積要綱書の排水通気 下の図は「見積要綱書」の「18-2.伸頂通気管の屋上防水部納まり」の図である。「防水継手」という金物を、スラブ施工後に後付する図だが、下に「コンクリートスラブに打ち込むケースもある」と注記されている。室内から排水管(耐火2層管)を屋根スラブの防水層より高くなるように立ち上げ、それにVP管を差し込んで延長して「防水継手」で覆い、そこに防水層を立ち上げて、防水端部は「カバー」で保護している。ごく一般的に用いられる納まりである。
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ⅱ.施工された排水通気 ところが、施工された排水通気は、見積要綱書とは大きく相違している。右写真は、本件建物の排水通気のキャップをはずしてみたものである。
ⅱ-①.防水の保護カバーがない まず、防水立ち上がり端部を保護するカバーが設置されていない。
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ⅱ-②.鋼管の錆 排水通気管は、建物内部の耐火2層管が、屋外に出て塩ビ管に変わる。 この塩ビ管は、室内排水管が延長されたものかもしれない。では、鋼管は一体何なのかというと、わからない。 防水継手の管径が太すぎたのかもしれないが、いくらなんでもそれはない。 |
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ⅱ-③.鋼管と塩ビ管の隙間処理
前項で示した写真で、鋼管と塩ビ管の間に白いものが見える。触ってみるとコーキングのような感じがするので、よくよく見てみると、コーキングだった。 少し捲れたところがあったので覗いて見たら、そこには電線管があった。 推測するに、数センチある隙間をそのままには出来ないが、かといってコーキングを充填することなどできず、思い余ってそこいらにあった電線管を塩ビ管に巻き付けて、バックアップ材としたのだろう。 |
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排水通気管を上から覗く
コーキング下に電線
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この施工は明らかに間違っている。
◆ コーキングが劣化し或いは写真のようにめくれると、鋼管と塩ビ管の隙間からに雨水が流入する。防水層の立ち上がりは鋼管に対して施工されていて、塩ビ管側面には施工されていないから、雨水が室内にいたると、即、漏水となる。 ◆ バックアップ材としての電線管の固定が堅固であるはずが無く、いずれコーキングとともに管の隙間にずれ落ちる。そうなると、これもまた雨水が屋内に浸入することとなる。 電線管
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ⅱ-④.ベントキャップ
更に言えば、この排水通気キャップはアルミ製の嵌合式であるが、一般的にはねじ込み式やボルト固定できる鋳鉄やステンレスのものを使用する。室内まで通ずる通気管の頂部は、唯一キャップだけで蓋されているのであって、これが外れたり穴が空くと、忽ち漏水となる。堅固なものを堅固に固定しなければならない。 |
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■これらの欠陥を放置した結果、台風18号の影響によりベントキャップが落下する事態となってしまった。 |
アスファルト防水のシート端部が浮いている箇所が多数存在している。 |
施工困難でない箇所においても、密着貼り付けがなされていない。 |
屋上の雨水排水ドレインの径が、75mmと小さいものが使用されている。 |
屋上面積を考えると、75mmでは集中豪雨時には排水しきれないと考えられる。 配管は下階のバルコニーにも繋がっており、バルコニーや居室内にまで雨水が溢れかえる恐れがある。 |
屋上のコンクリート基礎上に設置された避雷針のベースプレートを固定しているアンカーボルトだが規定通りなら締め込んだナットから3ネジ山以上出ていないといけない。しかし、実際にはナットの中に留まっている状態になっていた。(戻り止めのためにダブルナットが通常なのだが、下の1個にしかかかっていない状態)
十分な固定耐力が満たされていないため、補修工事を行う必要がある。