建築物に使用するコンクリートは、建築基準法により、日本工業規格(JIS)もしくは、国土交通大臣認定のものを使用しなければならないが、大津京ステーションプレイスでは、そのどちらのものも使用されていなかった。
通常コンクリートは、生コンクリート工場からJIS規格品を購入する。
生コンの発注方式は『呼び強度発注方式』であり、これは建物の構造計算により算出された、設計図に記載された設計基準強度に従って発注する方式である。
当然、JIS規格品であるため、生コンクリートの品質責任は製造工場責任となる。
契約は、この呼び強度発注方式のコンクリートを使用する事になっていた。
ところが、大津京ステーションプレイスでは、一般に聞きなれない『水セメント比発注方式』で、工場に注文して使用していた。
水セメント比発注とは、設計基準強度を満たすためだけの、水とセメントの配合比率で製造された生コンクリートを発注する方式であり、JIS規格外である。
また、国土交通大臣認定も受けていなかった。
(※イラスト補足:コンクリートの品質管理は通常コンクリート試験室を現場に設け、コンクリート主任技術者を常駐させて管理する)
JIS規格外であるため、生コン工場には品質責任はなく、発注者(南海辰村建設㈱)に責任が移行され、生コンの品質試験の回数が増え、水分量の測定も毎回必要となる。
また、生コンクリートの強度を常に確保するため、コンクリートの打設も綿密に行わなければならない。
しかしながら、南海辰村建設㈱には、これまでの調査でわかる通り、生コンクリートの強度を常に確保しながら打設する施工能力があるようには思われない。
生コンクリート品質には材料と現場施工の品質の両方が必要であるが、現場施工にこれだけ多くの瑕疵(かし)と不備が存在していては、当然生コンクリートの品質も確保できるわけがないと判断できる。
大津京ステーションプレイスには、JIS規格品と、規格外品の両方が使用されている。
生コンクリートにおいて、『呼び強度発注方式』から『水セメント比発注方式』に変更して使用する場合は、
JIS規格外の建築材料(コンクリート)を使用することになり、国土交通大臣の認定を受けなければならないと建築基準法第37条で定めている。
これについて、南海辰村建設は「生コンにおける水セメント比発注については、確認検査機関及び大津市建築指導課におけるヒアリングにより承認されていた」と確認検査機関や大津市建築指導課に承認してもらったかのような主張をしている。
しかし、弊社が I-PEC(確認検査機関)、大津市の担当者に面会に行き、直接確認を取ったところ、「そのような事実はなく、JIS規格に適合していない水セメント比発注によるコンクリートで施工していることすら聞いていなかった」との回答を得た。
これは、確認申請図に書かれた強度と異なった生コンクリートを無許可で使用したという、重大なコンプライアンス違反であり、また、大津京ステーションプレイスの構造体力に大きな悪影響を及ぼす要因のひとつである。
水セメント比発注方式は、
① 品質基準強度 3N/m㎡
② 温度補正強度 3~6N/m㎡
の2種類の補正強度を省いて、設計基準強度のみとして強度を決め、水とセメントの比率の配合を決定した生コンクリートを発注する方式である。
『呼び強度発注方式』と『水セメント比発注方式』の計算方法には、最大9N/m㎡の差がある。
※ ・・・【N/m㎡】コンクリート圧縮強度の単位。
※① ・・・【品質基準強度】コンクリート打設による施工品質のバラツキを考慮した補正強度値 (3N/m㎡)
※② ・・・【温度補正強度】コンクリート打設時期の気温により決められた補正強度値 (3~6N/m㎡)
さらに、確認申請図のコンクリート強度は、契約図のコンクリート設計基準強度から、3N/m㎡下げられていた。(以下の表を参照)
当然、強度を下げる事によって、生コンクリート材料費も大幅に安くなる。
下の図では、赤い部分は高価なコンクリートを使用しており、水色になるにつれ安価なコンクリートとなっている。
契約図と確認申請図を比べてみても、確認申請図の方が全体的に黄色くなっているのがわかる。
また実際の工事では、さらに安価な水セメント比発注のコンクリート(青部分)を使用している。
契約図と実際の工事のコンクリートの差額は46,957,065円にものぼった。
契約者を欺き、自社の利益追求だけを考えている事がよくわかる。
(※画像をクリックすると拡大します)
弊社にて、納品された生コン伝票を生コンプラント会社から取り寄せ、生コンの使用箇所を調査した。
実際に打設された数量と生コン納品書数量を比較したところ、驚く事に架空の生コン伝票が存在していることが明らかになった。
また、生コンクリートの納品書は2枚綴りになっていて、検収担当者が現場で最終伝票にサインをして確認するようになっている。
本件の場合、納品書を確認したところ、工場の納品書と現場保存の納品書に書かれたサインが相違している事が発覚した。
弊社としても、南海辰村建設㈱がこのような事をしているとは信じ難いですが、現にこのような事実が発覚しており、困惑しております。
南海電鉄グループがこの訴訟に対して内部調査を行い、安心して建物を提供してもらえる健全な会社になる事を弊社は望んでおります。
コメント
南海辰村のISO9001を認証してるMSAはどう判断しているのでしょか? また元締めのJABの判断は?