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無計画な工事により補強筋を切断したまま放置

地中梁設備配管貫通孔補強金無し(100φ以上)

地下立体駐車場設備ピットの界壁の地中梁に通水管を入れ忘れたという理由で、後施工用コア抜きを行った際に、スターラップ(補強筋)を切断してしまい、何も補強無しの状態である。

一審の判決では、南海辰村建設の瑕疵工事であることが認められた。

※スターラップ:
スターラップとは、鉄筋コンクリート造の梁の主筋に一定間隔で垂直に巻き付けた鉄筋のこと。
コンクリート梁部材において、部材のせん断強度を高めるために、軸方向鉄筋を取り囲むように梁と直角方向に配置される。



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鉄筋の錆汁が排水溝に流れている。
褐色のエフロの原因は鉄筋の錆である。


一級建築士による鑑定意見書

S-5

上記構造図(S-5図 4-7 梁貫通補強)には「φ(孔径)が100mmかつD/8(梁成の8分の一)未満のときは、補強を必要としないが、あばら筋を切断してはならない」と注意書きがある。
つまり、孔径が100mm以上であれば補強筋が必要であることと、鉄筋を切断することは論外のことであると示されている。
地下立体駐車場まわりの基礎梁に穿たれた通水孔には、梁貫通位置を間違って施工したらしく、コンクリート硬化後、別の位置に新たに設けられた梁貫通孔が散見される。顕著な例を次に示すが、貫通コアを穿孔する際に既存の鉄筋を切断し、それが激しく錆びている。


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地下ピット 西側面5通り 排水スリーブ
コア削孔現況(鉄筋の切断面が確認される)


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上の写真はこの貫通孔の遠望である。鉄筋の錆汁が排水溝に流れているのがわかる。褐色のエフロの原因が鉄筋の錆であることを強く疑わせる。
当然のことながら「貫通補強筋」を、コンクリート断面の内部に後から設置することは不可能だから、新孔を開ける際には、事前に既存の鉄筋位置を確認しなければならない。貫通孔内部に鉄筋が見えているということは、鉄筋位置の確認をしないまま穿孔したことを物語っている。
これは、「スリーブの位置を間違えた」或いは「スリーブの施工忘れ」に加え、「既存の鉄筋を切断する」という、とんでもない間違いを二重に犯したことになる。
このような杜撰(ずさん)な施工は当該箇所だけとは思えない。調査の及んでいない箇所はどうなっているのか、はなはだ疑問である。

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