欠陥を補修しても不動産の価値は元に戻らない

今日は、資産価値の下落(評価損)は瑕疵と相当因果関係のある損害にあたることについて述べます。

 

建物には、そこで居住するという使用価値に加えて、資産としての価値が存在します。建物に重大かつ多数の欠陥(瑕疵)が存在すると、これらの欠陥の補修のために大規模な工事を行う必要があります。

 

このことは建物の注文者にとって、多額の費用をかけて新築した建物に対して相当な心理的不快感が生じるばかりか、多数の重大な欠陥に対する大規模な補修工事は、建物の資産価値(交換価値)を低下させるものであり、資産価値の下落分は補修工事によって回復できるものではありません。

 

このような資産価値(交換価値)の下落については判例があり、福岡高等裁判所平成18年3月9日判決では、新築直後にタイルが剥落し、大規模な補修工事を行った事案において、「本件マンションの上記瑕疵(タイル剥落)が顕在化したことから一度生じた、本件マンションの新築工事にはタイル以外にも施工不良が存在するのではないかという不安感や新築直後から本件マンションの外壁タイルに対して施工された大規模な本件補修工事から一般的に受ける相当な心理的不快感、ひいてはこれらに基づく経済的価値の低下分は、本件補修工事をもってしても到底払拭しがたいといわなければならない」と述べています。

 

さらに「いわゆるマンション分譲における各室の購入者は、その経済的価値としては、各室の使用価値とともに交換価値(資産価値)にも重大な関心を有していることが一般的である。実際に903号室に関する不動産競売手続において、外壁タイルの剥離・剥落をもって減額要素の1つとして評価されている」として、資産価値の下落は欠陥(瑕疵)と相当因果関係のある損害にあたると判示しています。

 

また、2008年に長野県佐久市に建設された分譲マンションにおいて、コンクリートを打設した後で、梁にコア抜きをした結果、鉄筋を切断し耐震強度不足となったため、施工会社(東武建設)により解体されたケースがあります。
東武建設は、建物の注文者に対し、建物を買い取って解体したいと申し入れ、解体したい理由を「建物を補強して構造耐力を回復できたとしても、不動産としての価値は戻らない。そのことに責任を感じているからだ」と説明しています。

 

このように、建物に欠陥(特に構造耐力にかかわる瑕疵)があった場合、仮にそれを補強しても建物価値(資産価値・交換価値)は、元には戻らず下落することは広く知られていることです。

 

大津京ステーションプレイスにおいても、多数の重大な構造耐力にかかわる欠陥(瑕疵)が存在することは、これまでにも本訴訟専用サイト本ブログを通してお伝えしてきました。
大津京ステーションプレイスを施工した南海辰村建設は、本件建物の欠陥問題について、前述したように一度生じた重大な欠陥(瑕疵)は、補修しても建物価値は元に戻らないことを理解したうえで、根本的な問題解決に向けて誠意ある行動を起こしてほしいと思います。

 

先日、三菱地所の欠陥マンションの建て替えが決まったそうです。解体と建て替えの費用は、施工者である鹿島建設が全額負担すると報じられています。
鹿島建設は、社会的信用を回復させるには責任ある行動をとる必要があると判断したのだと思います。

南海辰村建設にも、建設業者としての社会的責任というもがあることを信じたいと思っています。

(社員F)

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