第十三章 南辰さん、法律・裁判所を熟知し、弁護士・学者を上手く使い、デタラメとウソばかりついて、ハイエナのようなことをしたらダメですよ・前編
~裁判所は、鬼ごっこをする場所じゃない~
<ハイエナも顔負けのあくどい手口>
大覚に対して訴訟提起するまでの最後の三か月間(平成二十一年十月~十二月)、南辰は瑕疵を隠ぺいするために、ハイエナも顔負けのあくどい手口を使い、大覚を翻弄し続けました。
平成二十一年十月(第一回)、および十一月(第二回)に行われた施主検査で見つかった合計千三百五十箇所の不具合を「必ず直します」と言いながら、いっこうに手直し工事に着手しませんでした。
施主検査では、瑕疵、未施工の工事、工事を途中で放棄したことを隠す為に、共用部の検査をさせませんでした。
十一月になると、入居日、すなわち引越しが決まっていたお客様に住戸を引き渡さなければなりませんでした。不具合の手直し工事について南辰に確認すると「責任をもって工事します。大丈夫です」と繰り返し言ってきました。その言葉を信じて、五十九戸のみ鍵の引き渡しを受けたのですが、南辰はこの五十九戸の仮の引渡しが行われたという既成事実をもって、建物自体(全百八戸と共用部)が完成したことにすり替え、「建物が完成しているのに、大覚が過剰な手直しを要求して引き渡しを拒んだ」と無理やり主張しているのです。
建物が完成すれば早急に契約者に住戸を引き渡さなければならないという分譲マンションの性質が悪用されたのです。結局手直し工事が行われることはありませんでした。共用部の施主検査も実施されませんでした。
立体駐車場地下ピット内部。南辰は打ち継ぎ処理をしておらず、鉛直打ち継ぎ部には隙間が開いている。そのため打ち継ぎ部の隙間から、絶えず地下水が侵入してくる。コンクリート成分が溶け出し、ヘドロのように溜まっている。
地下ピット内に地下水とともに侵入してくるコンクリート成分は鍾乳洞のよう固くなり、地下ピットの壁面や床に堆積している。地下水はコンクリート内部の鉄筋を錆びさせ、その周りのコンクリートを劣化させている。建物の構造耐力、耐久性は日を追うごとに低下している。
十二月になると南辰の営業課長が「建物は完成していますから、今月中(年内)に入金してください」と請求書を持参しました。
「何度も手直しの要請をしているのに、全く応じてもらっていません。手直しが完了していない状態、つまり建物は未完成ですから、まだ請求書を受領する状況にはありません。受け取ることはできません」と大覚は返答し、支払いを拒否しました。その後も、南辰から何度も請求書が郵送されてきました。
十二月のこの時点で、建物は完成しておらず、引き渡しも済んでいませんでした。分譲マンションの事業主として、各住戸の不具合箇所の手直し工事が終わっていなければ、お客様に販売することはできません。「手直しが終わったら、いつでもお金を払います。早く建物を完成させて、引き渡してください」と何回も南辰に申し入れていました。そんな中、南辰から申し出がありました。
「支払いするお金が無いなら、買取りましょうか」と、未販売の四十九戸を南辰が買い取ると言ってきたのです。
何か裏があると思い、その話は断りました。南辰には弁護士を通じて残高証明を送り、支払う資金があることを伝え、手直し工事について何度も話し合いの場を持つことを呼びかけました。南辰から返答はありませんでした。話し合いについての連絡ではなく、残代金の請求書が送られてきただけでした。そして、一度も話し合いの場がもたれることなく、南辰が残代金の支払いを求める訴状が裁判所から届いたのです。
その後、南辰傘下の不動産会社の営業マンが、大津京ステーションプレイスを下見に来ていました。売却する準備をしていたのだと思います。大覚の社員が近づいていくと、逃げるように、その場を立ち去って行きました。
建物は完成しておらず、引き渡しができる状態でないにもかかわらず、南辰が未販売住戸を買い取ると申し出たのはなぜでしょう? この取引に応じることによって、共用部と全百八戸の引き渡しが完了し建物が完成したと世間を欺き、瑕疵を隠ぺいするためだったのです。それこそが南辰が計画的企み、罠を仕掛け、この取引を持ちかけてきた狙いでした。
南辰の誘いに応じていたら、工事残代金の支払いは完了し、南辰が大覚に対して訴訟提起することはなかったでしょう。しかし、販売された住戸、共用部から次々に瑕疵が噴出し、住民が騒ぎ出すのは時間の問題です。そうなれば、住民の矛先(ほこさき)は事業主大覚に向けられ、瑕疵だらけのマンションを販売した不動産会社として、日本中から非難を浴びることになったでしょう。それが、南辰の計画的企みと狙いだったのではないでしょうか。
十二月後半になると南辰が裁判を起こす準備はすべて整いました。もともと裁判を起こす段取りをしていたため、手直し工事着手どころか、共用部は工事途中のまま放置され、資材も置きっぱなしのまま、南辰は工事を放棄し、現場を引き揚げました。そして年明けの一月七日に請負残代金の支払いを求め、大覚に対して訴訟を提起しました。
南辰は平成二十一年の暮、突然現場を引き揚げた。しかも資材やゴミが置きっぱなしだった。写真は電気室内に無造作に置かれた資材の山。中には引火性のものもあり、すぐに別の場所に移動しなければならなかった。
さらに驚いたことに、六千六百ボルトの電流が流れる変圧器の上に直径二十五センチの水の配管が通っていた。安全性を無視するにもほどがある。漏水があれば感電し、隣にあるキッズルームで遊んでいる子供たちの命が危険にさらされる。マンションに時限爆弾を仕掛けるに等しい行為だ。
屋上フェンスの扉。コンクリートを置いただけで、固定されていない。こんな簡単な補修もせずに、南辰は現場を引き揚げた。基礎を置いただけの扉などありえない。
<住民への配布文書やIR情報で大覚の評判を落とし、大覚を倒産させようと企む>
南辰による組織的、計画的な訴訟提起の後、大覚は建物の調査を開始し、ずさんな工事の実態が次々と明るみに出ました。専門家に依頼して調査をすると、屋根に三百トンもの余分なコンクリートが増し打ちされていることが分かりました(後に二百五十四トンであることが判明)。耐震構造上、重大な問題であることから、大覚は事業主としての責任から住民説明会を開きました。南辰は、大覚の呼びかけに応ずることなく、怒号の飛び交う説明会に出席することはありませんでした。住民との話し合いの結果、合意解除を希望するお客様には販売価格で買い戻す決断をしました。合計で約八億円を支払いました。(しかし、南辰からはその後も一度も連絡はありません。話し合いも一度もありません。唐突に裁判をかけられ、弁護士を通してしか話ができないようにしたのです。計画的であくどいやり方です)
構造計算にない二百五十四トンもの余分なコンクリートを打設したことにより、屋根形状がパターゴルフ場のように波打っている。大きな屋根荷重により建物の耐震性に重大な影響を及ぼし、地震が来たら倒壊する危険がある。南辰は役所に変更届けを出していなかった。確認申請機関をだまして、検査済証を取得していたのだ。
二百五十四トンもの余分なコンクリートの増し打ちのせいで、パラペットの立ち上がりが異常に低くなってしまった。通常なら二十五センチ以上あるが、このマンションではわずか四センチしかない。こんなわずかな隙間しかなければ、防水シートを固定する「押え金物」の取り付けや、百七十度もある高温のアスファルトの上に腹ばいになって立ち上がりを施工することは不可能だ。防水施工不良により、防水検査を行うと十四階で大量の雨漏りが発生した。
大覚が、マンション住民に対して責任ある対応に追われていた頃、南辰は新たな計画的企み・罠を仕掛けていました。
まず、南辰はマンション住民に「大津京ステーションプレイス住民の皆様へ」と題した文書を配布しました。主な内容を示します。
■設計監理会社マサプランニングの監理の下、事業主にも報告し、確認をもらい工事を行っていた。
→デタラメ・ウソです。
■建物完了検査済証を取得している。
→南辰はウソをついて、検査機関を欺き、形だけの検査済証を取得したのです。
■事業主検査、内覧会を行い、その際に見つかった不具合の手直し工事が全て完了している。
→「全て完了」どころか、南辰は全く手直し工事に着手しなまま、工事を投げ出し、建物の完成を放棄し、突然現場を引き揚げたのです。
■大覚がマンションに問題があると言って、完成した建物の引き渡しおよび工事残代金の支払いを拒否している。
→大覚は南辰に対し、手直し工事が終わったらすぐに残代金を支払うことを伝え、残高証明も提示していた。
■そのため、大覚に対して支払い請求の訴訟を起こした。
→これこそ計画的企み・罠・謀略・策略・ウソ・デタラメだった。
■大覚が住民の皆様に対して、マンションに耐震構造上問題があると説明しているが、建物完了検査済証を取得しているので問題はない。
→基礎梁は一体化未形成、屋上の二百五十四トンの増し打ち、杭の支持層未到達など、瑕疵をあげればきりがない。
■一年点検を実施する用意があることを大覚に申し入れている。
→ウソ・デタラメを並べ立てて、いまだに、一年点検は行われていない。
マンション住民に配布された文書には、南辰のウソ、デタラメが散りばめられていた。
南辰による住民への配布文書を、現在改めて読み返してみると、南辰がいかに実態をごまかし、法令遵守をしている企業のように見せかけようとしていたのかが分かります。裁判慣れした南辰は、裁判でもこの文書にあるようなウソを並べ立て、ウソの証拠を揃え、ウソを突き通すことで、裁判、法律を手のひらで転がし、多くの中小企業を手玉にとってきたのでしょう。上記にある「一年点検」については、大覚関係者を排除しなければ点検しないという条件を付け、またしても南辰らしい「あくどい手口」によって実施されることはありませんでした。
南辰は、配布文書から数か月後、今度は自社ホームページのIR情報を使って大覚を陥れる作戦に出ました。「建物の引き渡し」や「手直し工事」、「建築確認」について、南辰が被害者で大覚が加害者であるかのように述べています。
① 工事請負契約書および図面にもとづき施工を進めていました。
② 竣工引渡も間近に迫った平成二十一年八月以降、幾度となく大覚から設計変更や手直しの工事の要求があり、それに応じてきました。
③ このような中、竣工引き渡し期日が到来したため、当社は本物件(全百八戸)を大覚に引渡しました。
④ 同社(大覚)も本物件の表示登記を完了した。
⑤ 大覚は当社に代金を支払わないばかりか、過剰な手直し工事の要求を繰り返すのみでありました。
⑥ 大覚が要求する手直し工事に誠意をもって対応してきたこと、
⑦ 大覚の代理人である設計監理会社の指示の下、建築確認済の図面にもとづいて施工し法律上問題ないこと。
⑧ 役所の竣工検査を経て、正式に建築確認検査済証を受けていることから、本物件について瑕疵は存在しないこと。
⑨ 平成二十二年一月七日付で請負代金請求訴訟を提起いたしました。
⑩ 本物件には大覚が主張する瑕疵は存在せず、これまで同社が要求してきた手直し工事は極めて過剰なものであり、一般的な取引慣行からは大きくかけ離れ、同社の請求は合理性を欠き極めて不条理である。
IR情報で南辰は「建築基準法に則って工事を行っており、建物に瑕疵はない」という大ウソを述べています。「大覚による手直し工事の要求は過剰であり、それに対して南辰は誠意をもって対応した」というのも大ウソです。建築基準法違反のずさんな工事を繰り返して、瑕疵だらけのマンションを建てておきながら、加害者である南辰が被害者のふりをして、大覚の評判をおとしめています。南辰が大覚にもたらした風評による悪影響は計り知れず、訴訟開始から八年経った今でも消えることはありません。(上記の①~⑩は計画的陰謀・謀略による悪だくみです。ひどい話です)
※第五章(連載第9回、10回)にIR情報の詳しい記述があります。
南辰は自社ホームページでIR情報を公開し、大覚の評判をおとしめる作戦に出た。南辰によって広められたウソ、デタラメによる風評被害は、いまでも大覚の事業展開に暗い影を落としている。
防水検査では防水層の下に雨水が入り込み、防水施工に不備があったことが明らかとなった。そのため最上階である十四階は大量の雨漏りが発生した。十四階室内は使い物にならなくなった。
屋上防水不備により、十四階軒天(のきてん)の亀裂から雨水が滴(したた)っている。十四室内には大量の雨漏りが発生し、カビやキノコが大量に繁殖し、もはや使い物にならない。
<証人尋問までの苦難の道のり>
平成二十五年二月の第一審敗訴後、大覚はすぐに大阪高裁に控訴しました。
控訴審が始まって間もなく、大覚は本格的に大津京ステーションプレイスの基礎の調査に乗り出しました。基礎梁の水平打継ぎ部、鉛直打継ぎ部のコアを採取して確認したところ、新たな発見がありました。水平打継ぎ部にレイタンスや木屑が残存しており、コンクリートが一体化していないことが分かりました。また、鉛直打継ぎ部でもコンクリートが一体化していませんでした。特に鉛直打継ぎ部断面は滑らかに施工されており、一体化どころか隙間が開いていました。コンクリートを一体化させるために通常行うべき打継ぎ処理が全く行われておらず、南辰のずさんな工事があらためて浮き彫りになりました。地下ピット内部への漏水の原因も明らかになりました。コンクリートが一体化していない為、地下水が隙間を通って地下ピット内部に侵入しており、コンクリート内部の鉄筋を錆びさせていました。現在、訴訟開始から約八年が経過し、建物の構造耐力、耐久性は低下の一途をたどっています。
コア抜き調査のコアを抜いた穴を調べると、打継ぎ箇所を示す線がくっきりと見える。基礎梁が水平打継ぎ部で分離していることはこの線からも明らかだ。バラバラで危険な基礎構造体により、大津京ステーションプレイスの構造耐力・耐久性は低下の一途を辿っている。
大覚が基礎梁を調査をすると、水平打ち継ぎ面が容易に分離した。南辰の打ち継ぎ処理は全くでたらめだった。
打ち継ぎ面には、木くずやレイタンスが蓄積していた。
大きな木くずが入っていた。本当に杜撰な工事だ。これが南辰の工事品質を物語っている。
JIS規格外の生コンを使用したため、いたるところにクラックが入っている。このクラックは貫通クラック(反対側まで貫通したクラック)のため、地下水が侵入し、コンクリート成分が、まるで、ひげのように結晶化している。南辰さんはハイエナですか。
打ち継ぎ面の施工不良により、基礎梁内部に地下水が侵入している。この地下水により、基礎梁内部の鉄筋が錆びてしまっている。耐久性が著しく落ちている。まさに、南辰の悪の種だ。やりすぎやで!! 北海電鉄の会長さん、南辰の社長さん、こんなデタラメな施工は日本中探してもどこにもありませんよ。
いたるところで、コンクリート内部の鉄筋が錆びている。これが十四階建てのマンションの基礎梁内部なのだ。これでも、まだ、「瑕疵が無い」というのですか、南辰さん?
鉛直打ち継ぎ部の調査を見守る、大阪高裁裁判官。
裁判官が見守る中で、柱際の鉛直打ち継ぎ部のコアを抜く、調査員。
鉛直打ち継ぎ面から取り出したコアは、裁判官の目の前で簡単に分離した。「コンクリートコアが分離することなんてありえない」と言っていた南辰は、この日を境に、「鉄筋コンクリートには、鉄筋が入っているのだから、コンクリートが分離しても問題ない」と主張を変更してきたのだった。
●南辰の無意味なDVD
平成二十六年、あるとき裁判官が次のように切り出しました。
「本件では瑕疵項目が次から次へと出されていますが、裁判所が判決を出すにあたって、瑕疵項目を全て審議してからですと膨大な時間がかかります。そこで、裁判所としましては、建物の基礎をまず審理の対象にしたいと考えています。基礎の状態を以て判決が出せるようであれば、そこで結審したいと思います。すなわち、建物の基礎に問題があるのであれば、他の部分を見るまでもなく、判決は出せると判断しました」
大覚は、専門家の協力を得て、基礎梁の調査を続けました。裁判所に、打継ぎ部で真っ二つに分離したコンクリートコアを持って行き、裁判官に見てもらったこともありました。大覚は本件建物の様々な箇所で、打継ぎ部のコア抜き調査を行いました。調査したコアはことごとく打継ぎ面で分離し、本件建物の基礎がバラバラであることが判明しました。
すると、南辰は、「打ち継ぎ部でコンクリートコアが分離する事はあり得ない」、「コアが割れるのは、大覚の抜き方が悪いからです。大覚の調査は信用できません」と主張してきました。南辰は独自に実験を行い、「我々の実験ではコンクリートはくっついていた」と、実験の様子を撮影した動画DVDを裁判所に提出してきました。
「割れる」、「いや、割れない」という両者の主張が平行線をたどる中、とうとう裁判官が提案しました。
「南辰さんがそこまで言うのであれば、南辰さんの言う方法や調査箇所で現場検証することにしましょう。裁判所も立ち会います」
平成二十七年九月十五日、大阪高等裁判所の裁判官立ち会いの下、コンクリート打ち継ぎ部のコア抜き調査が行われました。裁判官、専門委員、双方の弁護士、社員の目の前で、南辰側の抜いた四本のコアは全て打ち継ぎ部で真っ二つに割れました。さらに、大覚側が抜いた九本のコアも全て割れました。この調査により、大津京ステーションプレイスの基礎コンクリートは、打継ぎ部で一体化していないことが証明されました。
南辰が裁判所に提出した実験動画DVDについての証拠説明書。南辰の水島部長は、コンクリート打ち継ぎ処理にワイヤーブラシを使ったことなどない、と言っているが、ここでは、「ワイヤーブラシにて清掃処理を施し」としている。明らかに、水島部長の証言と矛盾するDVDだ。
南辰が裁判所に提出したDVDの解説資料には、「適切な打ち継ぎ処理を施し」とある。南辰はこの実験において、コンクリートコアが割れることは無い、と結論付けていた。つまり、適切に打ち継ぎ処理をすれば、コンクリートコアは割れないことを丁寧に立証していた。しかし、裁判官立ち会いの前で、コンクリートコアが簡単に分離してしまったのだ。つまり、南辰の打ち継ぎ処理は、・・・?
南辰がコンクリート打ち継ぎ処理を行っていなかったため、基礎梁のコンクリートは鉛直打ち継ぎ部で分離している。建物の外側に緑色の水を溜めて、建物内部への漏水の有無を確認すると、緑色の水は打ち継ぎ部の隙間を通り、建物外部から地下ピット内部に侵入していた。
鉛直打ち継ぎ部にあれだけの隙間があるのだから、地下水が侵入するのは当たり前だ。構造耐力上、打ち継いではいけない場所に打ち継ぎを行っている。建築常識では考えられない施工だ。
建築裁判など、専門的知識を必要とする訴訟では、専門家が裁判所の補助者となり、争点整理などの際に、裁判官や当事者に対して、公平中立的な立場で説明を行います。この控訴審においても専門委員が途中から加わり、平成二十七年九月十五日の現地見分でも裁判官に同行し、コンクリート打ち継ぎ部のコア抜き調査を裁判官と並んで見ていました。
この現地見分でのコア抜き実験前には、「打ち継ぎ部でコンクリートコアが分離する事はあり得ない」と南辰は自信満々に言っていました。しかし、問題の瑕疵の現場、大津京ステーションプレイスの基礎梁において、自らが抜き取ったコアはどこもかしこも簡単に打継ぎ部で割れてしまいました。しかも、裁判官、専門委員の目の前で割れてしまったのです。
覚くんにとっては打継ぎ部でコンクリートが分離することはこれまでの調査で分かっていたことでしたが、南辰が事前に入念な調査をし、最新の機械で抜き取ったコアが、自然落下や石頭(セットウ)ハンマーで衝撃を与えるまでもなく、抜き取るやいなやすぐに割れてしまったことにほっとしました。
しかし、最初のコアを両手で押さえて、「割れてませ~ん」と誇らしげに叫んでいた南辰の水島工事部長は、そのコアが実は初めから割れていたことや、その後に南辰が抜き取った三本のコアが床に置くだけですぐに割れたことなどまるで意に介さないといった様子でした。むしろ、その場ですぐに悪知恵を働かせ、それまでとは打って変わった主張をしてきました。「コンクリートは割れても問題ないのです」と裁判官、専門委員、多くの建築専門家を目の前にして平然と言っていました。当日、大覚側の抜き取ったコアには鉄筋が含まれていましたが、鉄筋が打継ぎ箇所を通っていたので、その部分は南辰の抜いたコアのように簡単には割れませんでした。そのことを南辰のネズミ部長はすかさず利用して、裁判官にすました表情で言いました。
「打継ぎ部でコンクリートが分離していても、鉄筋が入っているので構造的には問題ありません」
大覚側のコア抜きの際に鉄筋が入っていたのは、南辰による鉄筋の配置、すなわち配筋が設計図通りでないからですが、打継ぎ部でコンクリートが分離していることに変わりありません。
分離しているコアを抱え、「割れてませ~ん」と叫んだ直後、そのごまかしがバレ、おずおずと真っ二つに割れたコアを鬼川弁護士に見せる、水島ネズミ部長。
抜き取ったコアの保管室に大覚、南辰の関係者一同が集まった。南辰の抜き取った四本のコアがすべて打ち継ぎ部で簡単に割れると、水島ネズミ部長は、裁判官、専門委員、多くの建築専門家を目の前にして、「コンクリートは割れても問題ない」と、これまでと正反対のことを言い出した。
●「専門委員に説明を求める事項についての回答」
大津京ステーションプレイスの現場でのコア抜き調査の結果をどう評価するかについては、その後の裁判で議論が続きました。裁判所にしてみれば、両者の水かけ論をそのまま聞いていたら判決を出すことができないと思ったのでしょう。裁判所は、控訴人、被控訴人、裁判所がコア抜き調査の結果について共通認識を持つことが必要と考えました。そこで、コア抜き調査の結果について専門委員に対して両者が合意した説明を求め、その回答を裁判所の見解として示すということになりました。それが、次に紹介する「専門委員に説明を求める事項についての回答」です。
専門委員からの回答。南辰は、鉄筋コンクリートとして一体化していれば問題ないと主張しているが、専門委員は、コンクリートとして一体となっている必要があるとしている。
現地見分でのコア抜き調査から約一年後、平成二十八年八月十日付けの「専門委員に説明を求める事項についての回答」(抜粋)で専門委員は、次のように述べています。
<質問四への回答>
「打ち継ぎ処理が正常になされてコンクリートの一体化が形成されていることは、構造計算で用いる各基準書の計算式の大前提となっております。逆に言えば、コンクリートの一体化が形成されていなければ、各基準書の計算式が適用できないと言えます。」
このことは、言い換えれば、コンクリートの一体化が形成されていない建物、すなわち基礎がバラバラである大津京ステーションプレイスは、構造計算ができないほど、ひどい建物、耐震構造的に危険な建物だということです。
立体駐車場のパレットの支柱が大きくずれている。使用中にチェーンが不気味な轟音を発して外れ、動かなくなってしまったのだ。調査の為に地下ピットに入っていた三人の調査員は二時間も閉じ込められた。メンテナンス業者からは、危険なため、使用禁止を通告された。
立体駐車場のパレットの支柱を上から覗く。定位置から大きくずれている。地下ピットには絶えず地下水が漏水し、プールのように水浸しになっている。訴訟開始から八年が経過し、立体駐車場の機械、チェーンは腐食(錆び)し、今回のように調査のために動かしただけで、チェーンが外れてしまうのだ。危険な状態だ。
続いて九番目の質問に対し、専門委員は、平成二十七年九月十五日の打ち継ぎ部のコア抜き調査結果について述べています。
<質問九への回答>
「コア抜きにより抽出したコンクリート打ち継ぎ部は、通常、容易に分離するものではありません。」
「容易に分離した場合は、粗面ではなく、流出したセメントペーストや表層部のレイタンスが残存した状態で打ち継ぎ処理がなされたと推測されます。」
つまり、専門委員(裁判所)は、南辰がコンクリート打継ぎ処理において、レイタンス除去、目荒らしなどの処理を怠っていたことは、実際に抜き取った打継ぎ部コアの分離状態を見れば一目瞭然であると言っているのです。
コンクリート打設後、水分の上昇に伴って、レイタンス(セメント粉末の不純物や骨材の泥分などで硬化力がなく、打ち継ぎ部の一体化を妨げる)が表面に堆積します。南辰は、このレイタンスを除去せずに、次のコンクリートを打設したため、コンクリートが一体化することはなかったのです。
ここにおいて、明らかなことは、実験では打継ぎ部の処理をしていたのでしょうが、実際の現場、大津京ステーションプレイスでのコンクリート打設工事では打継ぎ処理をしていなかったということです。その処理とは、コンクリート打設後、表面に浮いてくるコンクリート成分であるレイタンスが固まる前に除去することです。
防水施工不備による雨漏りで水浸しになった十四階室内は、湿気でジメジメしており、部屋中にカビ、キノコ、コケなどが大量に発生している。得体の知れない様相を呈し、まるでお化け屋敷のようだ。
部屋中にカビ菌が充満している。長く部屋にいるのは危険だ。咳き込み、頭痛に見舞われる。
「現場では打継ぎ処理をしていなかった」という不都合を前にして、南辰は新たな策略を打ち出してきました。
ひとつは、コンクリートは打継ぎ部でくっついていなくても大丈夫だという主張です。基礎梁のコンクリートが打継ぎ部で分離していても、つまり建物の基礎がバラバラであっても、構造的には問題がない、建物は安全であるという意見書を、新たな専門家や学者を雇っていくつも書かせ、裁判に提出してきました。
もう一つは、コンクリート打継ぎ工事において南辰はきちんと打継ぎ処理をしていたという、誰がどう考えてもウソとしか思えない主張です。このウソを通すことで、南辰はコンクリート工事の基本である打継ぎ処理をしていたが、そもそも打継ぎ部は処理をしようがしまいが、一体化はせず、分離しているのが当たり前だということにしたいのです。
しかし、どんなウソでも、それを執拗(しつよう)に繰り返し、しらばっくれることで、ウソが現実を凌駕(りょうが)することが裁判では起こり得ます。その役割を担っているのが、水島工事部長です。水島は現地見分でも、ことあるごとに辻褄(つじつま)のあわない即席の言い訳、その場しのぎの言い逃れをしていました。大覚の担当者が裁判官、専門委員に瑕疵の現場を案内し、説明をしているときでも、繰り返し、口を挟んできました。あまりのしつこさに裁判官にも注意されていました。
「ここは、確認する場ですから、大覚さんの説明を聞きましょう」
このように、ウソであろうがなかろうが、筋道が通っていようがいまいが、お構いなしの水島工事部長が、証人尋問で南辰側の二人目の証人に選出されました。
屋上で、大覚社員が説明している際に、割って入る水島ネズミ部長。
この後、裁判官から、「ここは、大覚さんの説明を聞く場なので」と注意されるのだった。
●証人尋問スタート:建築構造専門家・飯田証人
・平成二十九年二月二十二日 第一回・主尋問
・平成二十九年四月二十六日 第二回・反対尋問
平成二十九年二月から七月にかけて計四回の証人尋問が行われ、二つのことが大きくとりあげられました。
ひとつは「打継ぎ部で基礎梁のコンクリートが一体化していないこと」について。もうひとつは「補修方法」についてです。
バラバラの基礎をどう補修するかについて、南辰の主張は、「基礎梁のコンクリートが打継ぎ部で仮に分離していても、鉄筋が入っているので問題はない。補修方法として、鉄筋量(本数)を増やすことで耐力を確保することができる」というものでした。
この南辰の補修方法には、初めから問題がありました。契約した元設計では、鉄筋コンクリートが一体化していることが、構造計算の前提条件です。南辰の提示した補修方法は、元設計で求められている鉄筋コンクリートの一体化を度外視しています。
南辰側の一人目の証人である建築専門家飯田氏は、南辰の補修方法である鉄筋量を増やせば構造的に問題がないという主張を後押しする意見書を書いていました。飯田氏の主張に対して、大覚の代理人、鬼川弁護士は、基礎梁が一体化していなければ、地震の際にコンクリートがずれるのではないか、ずれることが前提の基礎は問題があるのではないかと追及しました。飯田氏は、鉄筋コンクリート造では、地震力に対してずれが発生しないように鉄筋コンクリートが一体化していなければならないことを認めざるを得ませんでした。
打ち継ぎ面が容易に分離している。鉄筋も錆びている。さらには、コンクリートの中に、木片まで入っている。南辰の工事の質の悪さを証明する「三種の神器」だ。
打ち継ぎ部のコンクリート内部も錆びている。
コンクリートの打ち継ぎ処理不良のせいで、コンクリート内部に水がしみこみ、鉄筋が錆びついてしまっている。構造耐力に与える悪影響は甚大だ。
大覚がこれまで調査した、打ち継ぎ部のコンクリートコア。全て、容易に分離した。
●JASS5:打ち継ぎ面の処理について
打ち継ぎ面の処理についても、鬼川弁護士は飯田氏に問いただしました。
「JASS5」という書物があります。
「JASS5」は「鉄筋コンクリート」についての、日本建築学会の建築標準仕様書のことで、建築工事において設計者、あるいは施工者が標準的に準拠すべき基準を記載したもの。建築工事の教科書とも言えるもの。
「JASS5」に「打ち継ぎ」について記載されています。
鬼川弁護士は飯田氏に質問しました。
「JASS5の二百四十ページに、『打ち継ぎ部の位置・形状、及び処理方法は、構造耐力および耐久性を損なわないようにしなさい』とありますが、これは、打ち継ぎの処理は、構造耐力に影響する、ということを言っていますね」
飯田氏は「そうですね」と答えました。
「『コンクリートの打ち継ぎ面は、レイタンス、脆弱なコンクリート、ごみなどを取り除き、新たに打ち込むコンクリートと一体となるように処理する』とも書いてありますね」
飯田氏、「はい」と返答。
「それから、『打ち継ぎ部のコンクリートは、散水などにより湿潤にしておく。ただし、打ち継ぎ面の水は、コンクリートの打ち込み前に、高圧空気などにより、取り除く』と書いてありますね」
飯田氏、「そのとおりだと思います」
「JASS5」に上記のような打ち継ぎ面の処理について明記されているのは、打ち継ぎ処理をせず、コンクリートが一体化していなければ、構造耐力に悪影響を及ぼすからです。打継ぎ処理をきちんとしていない大津京ステーションプレイスの基礎梁はコンクリートが一体化しておらず、構造耐力が低下しています。証人尋問でのやりとりで、構造専門家の飯田証人が「基礎梁コンクリートが一体化していなければ、構造耐力が低下する」という事実を述べることで、南辰は罪を認めたことになります。
鬼川弁護士は続けて飯田証人に確認しました。
「構造計算では、鉄筋コンクリートは一体のものと考えている。つまり一体のものと考えるからこそ、鉄筋コンクリートに打ち継ぎ部をできるだけ、少なくして、やむを得ず打ち継ぎをするときは、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが一体となるように打ちなさい、と言っています。これが、「JASS5」の考え方ですね。なぜなら、それが構造耐力に影響するからですね?」
飯田証人は「そうです」と返事をしました。
そもそも、飯田氏は「JASS5」の共同執筆者です。南辰はそのことを利用して、飯田氏にコンクリートが一体化していなくても問題ないという意見書を書かせました。しかし、その意見書は実は、「JASS5」ではなく、「プレキャスト指針」の理論をもとに書いたものでした。プレキャスト理論を用いて「打ち継ぎ面でコンクリートがずれても、鉄筋が入っていれば問題がない」というものでした。ところが、本件建物は鉄筋コンクリート造なので、打ち継ぎ面でずれは発生しないことが前提であり、全く異なる理論を持ち出してきたのです。真相を鬼川弁護士が追求すると、飯田氏は、正直に「鉄筋コンクリート造では打ち継ぎ部でずれてはいけない(コンクリートが一体化していなければならない)」と証言したのです。飯田氏は建築専門家としてウソがつけなかったのです。
この日、建築専門家飯田氏に対する反対尋問は、専門的なことを問題にしているので、一般の人にはむずかしい内容でした。南辰側も含めて、傍聴席に座っていた多くの人には理解できなかったと思われます。そのためでしょうが、傍聴席に座っていた二十名ほどの南辰社員は、何とか南辰の罪を認める証言を引き出そうと、汗を拭きながら四苦八苦している鬼川弁護士の姿を笑って見ていました。聞くところによると、その日の尋問が終わり、法廷を出た南辰社員が互いにVサインをして喜んでいたそうです。当日、彼らが内容を理解していて、かつ同じ行動をしていたとしたら、首をかしげたくなります。
現地見分の際に、南辰が抜き取ったコンクリートコア。全て容易に分離した。一番右のコアが、南辰水島部長が、「割れてませ~ん」と叫んでいたもの。
「ホントに、すべすべ、つるつるね」と抜き取ったコアの鉛直打ち継ぎ面を指先で確認する裁判官。
鉛直打ち継ぎ面はつるつるだ。打ち継ぎ処理が全く行われていなかったことがわかる。
大覚側が抜いたコア。全て容易に分離した。鉛直打ち継ぎ面はつるつる(手前の短いコア)で、水平打ち継ぎ面にはレイタンスが堆積していた(真ん中と奥の長いコア)。
●証人尋問後半:南辰工事部長・水島証人
・平成二十九年五月二十四日 第三回・主尋問
・平成二十九年七月二十六日 第四回・反対尋問
南辰は水島工事部長の証人尋問の直前になって、新たな補修方法として「コッター補強」を提示してきました。証人尋問の始まる前には、「鉄筋量(本数)を増やすことで耐力を確保することができる」という主張に基づいて、「打継ぎ部に鉄筋を挿入して補修する」と言っていました。裁判官も専門委員もその補修方法について検討し、裁判所としての見解を「専門委員に説明を求める事項について(回答)」に示していました。ここで、いきなり新たな補修方法を出してくるというのは、裁判所を愚弄しているとしか言いようがありません。大覚としては南辰の「コッター補強」は時機に遅れた攻撃防御方法として却下するよう裁判所に伝えるよう鬼川弁護士に伝えていましたが、その要求をしてもらえず、「コッター補強」は証拠として採用されてしまいました。
南辰が出してきた新たな補修方法「コッター補強」というのは、南辰独自の理論で構成された方法であり、建築専門家でさえも聞いたことがないような方法です。誰もが、「こんなやり方で建物がもつとは思えない」と言っていました。このマンションは新築マンションです。しかも、完成引き渡しもしていない。新築マンションにコッターによる補修方法を出してくるのは見当違いです。
大覚が、「コンクリートコアが分離する」と主張すると、南辰は、「大覚のコア抜き方が悪い。短いコアは割れやすい」と反論してきた。そこで大覚は、長いコアを抜いてみた。やはり、容易に分離したのだった。つまり、南辰の主張は・・・?
基礎梁のコアを貫通させて抜き取った。打ち継ぎ面の全面にレイタンスが堆積しており、バラバラの基礎梁であることがまた一つ明らかになった。
南辰が言う、コッター補強に用いる角型鋼管。基礎梁の打ち継ぎ部に水平に穴をあけて、こんな鋼管を挿入すると言っているのだ。こんなものを入れても、全く効果は無い。「JASS5」には、コンクリートが一体化していることが前提となっているのだ。ちゃんと施工していれば、一体化しているのが当然だ。こんな鋼管を入れて、「ずれない」と主張しているのが南辰だ。議論のレベルが恐ろしく低下している。
●反対尋問での鬼弁護士 vs証人ネズミ
七月二十六日の反対尋問は、鬼(鬼川弁護士)とネズミ(水島工事部長)の追いかけっこを見る思いでした(これがホントの鬼ごっこ!)。鬼はネズミを追いかけ、何度もドスン!ドスン!と金棒をネズミめがけて、振り下ろすのですが、ネズミはすばしこく、ずる賢く立ち回るので、なかなかネズミを捕えることができません。鬼も最後には息切れしていました。
証人ネズミは、鬼弁護士の質問に対して、平気でウソをつき、わざと論点を外した返答をしたり、質問が理解できないふりをして不誠実な回答を繰り返していました。「はい」、「いいえ」の返答で済むような簡単な質問に対しても別の話題に話をすり替えて、進行を遅らせ、鬼川弁護士を苛立たせていました。あまりのオトボケぶりに裁判官も呆れ果て、とうとう注意される始末でした。
「水島さん、本当のことを述べてください」
また、ネズミにきりきり舞いしている鬼を気の毒に思ったのか、「この方(水島)に聞いてもしょうがないですね」と言い出す場面もありました。コンクリートについて聞いているのに、鉄筋のことを話したり、全然違うことを言い出したり、的外れなことを言って時間稼ぎをしているのは誰の目にも明らかです。
「残り時間十五分です」と裁判官から告げられました。
鬼川弁護士はイライラし、手短に質問すると、それを見た南辰側弁護士は、すかさず、「証拠を提示して質問してください」と横やりを入れ、鬼川弁護士をますます焦らせていました。
●別の現場にいた水島がなぜ証人に?
予定時間六十分の反対尋問が始まり、まず水島工事部長の経歴、立場について質問がありました。大津京ステーションプレイスの建設工事が行われていた当時(平成二十年四月~平成二十一年暮)、水島は別の現場を担当していました。問題になっている建物の工事に関わっていない者を証人に立てるなんて、これは南辰の計画的企みかもしれません。実際に現場に常駐していた金谷所長や森主任が証人であれば、現場で何が行われていたか追及することもできるでしょうが、別の現場にいた人間であれば、南辰の都合の悪いことは「私は現場にいなかったので、それについては知りません」と追及を逃れることができます。これがまともな人物であればまだしも、水島が証人に立つということは、それだけで警戒しなければなりません。水島は自分の知っていることでも、知らないことでも都合よく話を作って返答してくるに決まっているからです。二年前の現地見分でも、抜き取ったばかりのコアを両手に抱えて突然「割れてませ~ん!」などと叫んで、覚くんを挑発し、その場を騒然とさせたのは他ならぬこの水島でした。水島がこの反対尋問でも何かを企み、何かを仕掛けてくることは十分に予想できます。いずれにしても、水島からの正直な証言は期待できません。おそらく、水島は大津京ステーションプレイスの施工中に現場には一度も来ていなかったと思われます。南辰は安全パトロールも品質検査も一度もしていないと思います。そうでなければ、こんな瑕疵だらけのマンションはできないと思います。
水島は一審の裁判には出てきていませんでした。控訴審の途中から登場してきました。劣勢になったために、ウソのうまい水島を裁判に投入してきたものと思われます。
写真右側に写っているのが、南辰の水島部長。水島部長自らコンクリートが打ち継ぎ面で分離しないことを証明していた。このコンクリートが分離しなかったのは、打ち継ぎ面を処理していたからだ。でも、大津京ステーションプレイスのコアは全て分離した。ということは・・・。
現地見分の際には、時間の制約もあり、一部のコアを抜いて、そこを裁判官に確認してもらった。その他の箇所のコアも確認してもらえるように、大覚が事前に抜いたコアを展示した。全てが打ち継ぎ部で分離している。これが南辰の工事の品質だ。こんな工事をしておいて、「誠心誠意工事をした」などという南辰は、盗人猛々(ぬすっとたけだけ)しい、と言わざるを得ない。
抜いたコアを分離しないように、そっと持ち上げて、打ち継ぎ部を確認してみると、はっきりとスジが入っていた。
コアは、容易に分離した。
●JASS5に準拠した打継ぎ処理
続いて、鬼川弁護士は、日本建築学会の建築標準仕様書「JASS5」の記載について水島に尋問しました。鬼川弁護士は第二回証人尋問(平成二十九年四月二十六日)でも建築専門家飯田氏に対しても「JASS5」に記載されている打継ぎ部の処理について質問していました。
「打ち継ぎ部の位置形状及び処理方法は、構造耐力および耐久性を損なわないようにしなさいよ、と言っているのは、やはり、打ち継ぎの処理は、構造耐力に影響する、という考え方ですね」
「コンクリートの打ち継ぎ面は、レイタンス、脆弱なコンクリート、ごみなどを取り除き、新たに打ち込むコンクリートと一体となるように処理する、と書いてありますね」
飯田氏は「JASS5」の記載に誤りはなく、「その通りです」と答えていました。構造計算一級建築士であり、「JASS5」の共同執筆者である飯田氏の証言によって、構造耐力と耐久性を損なわないようにするためには、コンクリートが一体化するように打継ぎ部の処理をしなければならないことが明らかになりました。「打継ぎ部の処理をきちんとすることが正しい」ことを南辰側証人が認め、南辰が認めたということです。
鬼川弁護士は、同じ質問を水島にすることで、「JASS5」に記載されている「打継ぎ処理」について、訴訟の当事者である南辰工事部長水島が正しく認識しているか確認したかったのです。そのうえで、実際に大津京ステーションプレイスでは南辰が「JASS5」に準拠したきちんとした打継ぎ処理をしていたのか、していなかったのかを水島に証言させたかったのです。
つまり、基礎梁のコンクリートを一体化させるためには、きちんとした打継ぎ処理を当然しなければならないのに、現地見分でのコア抜き調査でコンクリートが打継ぎ部で簡単に分離したことから、南辰が打継ぎ処理を行っていなかったことは明白なのです。そのことを水島証人に認めさせる、すなわち南辰に認めさせることがこの反対尋問でできるでしょうか。
不気味なキノコと黒カビが同時発生し、十四階室内に焼け跡のような気味の悪い様相が現れた。十四階住戸は雨漏り被害で使い物にならなくなった。
十四階住戸のリビング。床一面にどす黒い緑色のコケが大量に発生している。ヌルヌルと滑るので立っているのも困難だ。部屋中、湿気で生臭く、目も痛くなる。
鬼川弁護士は質問しました。
「本件のようにコンクリート打設を複数回重ねて行う場合、打継処理をするのは、打継ぎ面の一体化を図り、基礎梁の耐力と耐久性を持たせるためですね」
この質問に、水島は次のように切り返してきました。
「コンクリートだけでは一体にならない。鉄筋コンクリートとしてなら一体になりますけど」
水島が簡単に南辰工事の非を認めるはずはありません。水島の企みはこうです。南辰は、コンクリート工事で「JASS5」に準拠した施工をしていないことを誤魔化す為に、「ワイヤーブラシをしたことが無い」と訳のからない返答し、「JASS5」通り打ち継ぎ処理を施工しても完全な一体化はしないという独自の理論を展開し、鉄筋があれば構造耐力上問題はないということにしたいのです。そうすれば、現地見分で南辰の抜いたコアがなんら力を加えることなく真っ二つに分離したことも説明が付き、打継ぎ部を鉄筋が貫いている場合は、たとえコンクリート単体でくっついていなくても、鉄筋コンクリートとしての見た目は分離していないことになります。水島の言う「鉄筋コンクリート」とは、まさにそういうコンクリートのことで、おでんの串刺しのように、バラバラのコンクリートに鉄筋が通っていたら構造体として問題ないと言っているのです。そんなことは、「JASS5」にもどこにも書いてありません。水島はウソ・デタラメばかりです。南辰の社長さん、すごいヒットマンですね。
南辰の所有する「JASS5」には「おいしいおでんの作り方」が載っているかもしれない。「下請けから裏金を取る方法」なども書かれている可能性がある。金谷所長はそこを読んで勉強していたのだろうか? 南辰ならそれもありだ。
●独自な解釈をでっち上げる水島工事部長
南辰のずさんな工事に都合のいい言い訳をもっともらしく述べるのは、ネズミ部長の得意とするところです。打継ぎ処理をする目的は何ですかと、鬼川弁護士が問いかけると、水島は真顔で言いました。
「JASS5に書いてある『一体化』というのは打継ぎ面と一体化という趣旨です。その下の(先打ち)コンクリートと一体化しなさいという旨ではない」
水島は、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートは打継ぎ面がぴったりと重なって、鉄筋があれば「一体化」と解釈しているようです。水島のこの独自な解釈は、大津京ステーションプレイスの構造体コンクリートはすでに一体化していないことが調査を経て明らかなので、なんとか南辰にとって都合の悪い事実をごまかすために言ったものと思われます。それにしても、水島は第二回証人尋問での飯田氏の答弁を自分の耳で聞いていたはずですし、この裁判を担当する工事部長として当然その時の尋問調書に目を通しているはずですから、わざと飯田氏の証言を無視して、独自な解釈をでっち上げたのです。南辰は何のためにこの裁判に途中から水島部長を投入したのでしょうか。はじめから終いまで水島部長はウソばかり述べていました。上場している南辰が、水島のようなウソとデタラメばかり言う証人を立てて、法律・裁判所をあざむき、愚弄してよいものでしょうか。南辰という企業は、まるで、マフィアのような組織ですね。
水島ネズミの独自な解釈、ごまかし、でっちあげはさらに続きます。
南辰の水島部長は、「コンクリートが一体化している必要はない。鉄筋コンクリートとして一体化していればよい」と言っていたが、「JASS5」には、「コンクリートの打継ぎ面は、レイタンス、脆弱なコンクリート、ゴミなどを取り除き、新たに打ち込むコンクリートと一体となるように処置する」と記載されている。
●「有害なレイタンス」と「有害でないレイタンス」
鬼川弁護士が南辰は打継ぎ処理を適切に行っていたのか質問し、「レイタンスの除去」に話が及ぶと、ネズミ部長はレイタンスには構造耐力上「有害なもの」と「有害でないもの」があり、有害なレイタンスは取り除かなければならないが、それ以外は取り除く必要はないと言い出しました。
鬼川弁護士が、二年前の現地見分の時に真っ二つに割れた打継ぎ面のレイタンスはどっちなんですか、と聞くと、ネズミ部長は返答しました。
「構造耐力上有害なレイタンスではありません」
「構造耐力上有害なレイタンスかどうか、どうやって判断するんですか?」
「目視でします」
「このレイタンスは有害、このレイタンスは有害でない、構造耐力に影響を及ぼさないと、どうやって判断するんですか?」
この質問に対して、ネズミ部長は、「基準はなく個人の感覚で判断します」と、平然と述べました。ネズミの言っている「有害なレイタンス」や「有害でないレイタンス」は、南辰が打継ぎ処理においてレイタンスの除去を全く行っていないことをごまかすための方便であったことがばれました。
そもそも、レイタンスに有害なもの、有害でないものなどという区別はないのです。水島部長は法律・裁判を愚弄し、ウソばかりを言っています。上場している会社の部長なのに、裁判所で平然とウソ・デタラメを並べるのですね。北海電鉄の会長さん、南辰の社長さん、あなた方の会社は世の中のルールを無視するんですね。まるで、マフィアのような組織ですね。
抜き取ったコアは簡単に分離した。打ち継ぎ面に白いレイタンスが堆積している。適切な打ち継ぎ処理をしていなかったことが確認できた。
●「ワイヤーブラシは使った記憶がありません」
レイタンスを除去する方法について、鬼川弁護士が水島部長に質問しました。
「ワイヤーブラシは使わないんですか?」
「ワイヤーブラシは使った記憶がありません」
鬼川弁護士は「JASS5」の打継ぎ処理の方法ついて述べ、さらに質問しました。
「JASS5にはね、基本的には、高圧水洗浄をして、その後、ワイヤーブラシを使う、それが基本。その後、先打ちコンクリートの部分を湿潤にする。そういう方法をとるようにという記述がありますが、ご存知ですか?」
「その部分は記憶にないですけれども」と、ネズミ部長は都合の悪いことは記憶にないと、しらばっくれる作戦です。
しかし、二年前の現地見分の前に、南辰が適切な打継ぎ処理を行ってコア抜き実験をしたという動画DVDを作成して、証拠として裁判所に提出した書面には、適切な打継ぎ処理を行い、水平打継ぎ面をワイヤーブラシ清掃したという記述があります。
水島部長、すなわち南辰は、自社に都合の悪いことは、簡単に忘れたと言い、なかったことであるかのようにごまかすのです。工事でも裁判でもウソのオンパレードです。
南辰が「JASS5」に準拠して打継ぎ処理を行っていたのは、実験においてだけであり、南辰の実験ではコアは割れませんでした。大津京ステーションプレイスのコンクリート工事では打継ぎ処理などまるで度外視したずさんな工事であったことは、現地見分で抜き取ったコアが次々に割れていったことから明白です。水島部長はなぜ一審の裁判に一度も出て来なかったのですか。控訴審から登場しましたね。それは、黒幕さんの指示ですか? 水島は南辰のヒットマンですか? このヒットマンは、法律・裁判・世の中のルールを何も守らない某組織から選ばれたヒットマンですか? ウソとデタラメを言うことが、水島の武器ですね。南辰は想像を絶する組織ですね。一般の人には理解できない組織ですね。すごいヒットマンを抱えているんですね。
「JASS5」には、「高圧ジェット水による洗浄、ワイヤーブラシがけによる脆弱層(ぜいじゃくそう)の除去などを行い」と記載されている。
さらに、南辰がコンクリートコアの付着について実験した際の「実験経過」においても、「水平打ち継ぎ面ワイヤーブラシ清掃」の日程が記載されている。
挙句の果てには、南辰実験の際の証拠写真にも、「レイタンス処置状況」として「水平打ち継面ワイヤブラシ処理状況」とある。でも、南辰水島証人は、「打ち継ぎ面にワイヤーブラシがけはしたことが無い」と証言していた。水島さん、証言には大きなウソがありましたね。
●「求められていませんから、撮ってませ~ん」
鬼川弁護士から、南辰が提出した証拠に打ち継ぎ部の写真が1枚しかないことを追及されると、水島は「記録のためには、求められておりませんので」と答えました。
「公共建築工事標準仕様書」には「打ち継ぎ部」など、工事の施工によって隠ぺいされるなど、後日の目視による検査が不可能または容易でない部分の施工を行う場合は、撮影することと記載されています。工事に打ち継ぎの工事に写真が一枚しかないということは、いかに工事がデタラメ・ウソで固められたものだったかということが証明されますね。
水島は、「求められれば打ち継ぎ部の記録としての写真を撮る。しかし、本件工事ではその求めはなかったから、打ち継ぎ部の写真が無い」と証言しました。しかし、共通仕様書の詳細を記述した、「工事写真の撮り方」をよく読むと、「打ち継ぎ部」は撮影することが求められています。証人尋問で求められている事実を述べず、平気でうその証言をしていました。工事写真は必ず撮影しなければなりません。それは、後々問題が起こった際に提出しなければならないからです。施主に求められる、求められないにかかわらず、工事写真は撮影しなければならないものなのです。あなた方は計画的企みを仕掛け、大覚を陥れようと、罠を仕掛け、IR情報でウソの情報を流しましたね。千三百五十箇所の手直し工事に着手することなく突然裁判を仕掛けてくるなんて卑劣なやり方をするんですね。南辰の社長さん、こんなことは世の中で通りませんよ。どうして、最後までウソとデタラメを繰り返すのですか? そこに大きな企みがあったのですね。何の目的でこんな一生懸命やっている中小企業を罠に嵌め、企み、陰謀・謀略を練り、大覚の何を狙っているのですか? 悪魔ですね。ハイエナですね。
鉛直打ち継ぎ面は付着しておらず、隙間が開いている。鉛直打ち継ぎ部の隙間は基礎梁のコンクリートを貫通しており、外部から絶えず地下水が侵入し、コンクリート内部の鉄筋の腐食(錆び)を進行させている。建物の構造耐力、耐久性を著しく低下させている。
癒えない傷口のようなジャンカに突き刺した画びょうが痛々しい。コンクリートが悲鳴を上げている。建物が泣き叫んでいる。ジャンカ・クラックなどのコンクリート不良は三千箇所以上確認された。南辰はJIS規格外のボロボロのコンクリートを使用しており、まったく品質が確保されていない。
●ウソ・デタラメな証拠をでっち上げようとする水島部長
南辰は基礎梁のコンクリート工事が行われた平成二十年十一月には中間検査があり、基礎梁の打継ぎ面の状況を検査機関の検査官が立ち会って見に来ているはずであるとする証拠書類を裁判所に提出しています。その後、中間検査に合格しているということは、南辰が基礎梁の打継ぎ面の処理を適切にしていたことの証であると主張しています。この証拠書類は南辰の建築本部工事部の名前で出されていました。つまり、水島工事部長が中心になって書かれたものと思われます。この文書が述べていることの根拠について鬼川弁護士が質問しました。
「あなたは、打ち継ぎ面の処理状況について、検査機関が見ているだろうという風に言っておられるんだけれど、いままで、南辰から出ている書証を見る限り、それを裏付けるものは何もない」
これに対し、水島は「自分も立ち会ってないからわからないけれども」と前置きしたうえで、「検査機関は多分見に来ていたはずだと思うし、そうでなければ写真を示しているはずだ」と述べました。
「じゃないと、中間検査の合格証が出ることはないですし」
「では、写真を提出したんですか?」
「写真は・・・」
「あなたは、全部推測で言っておられるでしょ。そういう事実があったかどうかわからないでしょ」
ここでまだ弁解しようとする水島を裁判官が止めました。
「そこはもう結構です。わかりました。あのね、何月何日、検査官が来たというバッチリと何か書いてあればいいのよ。ただ、そういうものがないとなるとね・・・」
検査官が打ち継ぎ処理を確認しにきたことはありません。また、水島が言うように、中間検査の時に、検査官が打ち継ぎ面を確認したという証拠は一切ありません。検査官が打ち継ぎ面を確認したという事実が無いのですから、その写真などあるはずがありません。南辰の主張は、日付もでたらめでした。こんな書類を、平然と裁判所に提出してきた張本人が、水島部長です。デタラメとウソばかりです。
写真も、書類もデタラメばかりです。裁判に勝つためには手段を選ばない会社、それが南辰です。まるで、ヒアリのように、なんでもアリの組織ですね。
南辰の資料を解析して、さらに現地を確認して明らかになった、基礎梁の分離状況。一層だけの打ち継ぎ不良でも大きな問題なのだが、二層、三層に打ち継がれている。その全てで適切な打ち継ぎ処理がなされていない。南辰はデタラメの施工だ。日本中どこを探してもこんなひどい建築会社はない。知らないうちに、家の土台を喰い荒す白蟻のような会社ですね。
地中深くに埋まっているはずの杭(上の図の円柱)、これも支持層に到達していなかった。さらに、基礎はバラバラ。この上に十四建のマンションが載っており、百八世帯の方が生活をする場となるはずだったのだ。そう考えると、背筋が寒くなり、凍りつくようだ。自分さえよければなんでもやるのが南辰だ。
南辰は、レイタンスの除去を行っていなかった。そのため、打ち継ぎ部で、容易に分離した。現地見分の際に、打ち継ぎ面の堆積していたレイタンスを見た南辰は、「有害なレイタンスは見当たらなかった」と主張し始めた。しかし、水島部長は、有害なレイタンスと有害でないレイタンスは、目視で、個人の感覚で判断すると証言していました。こんなに重大な問題なのに、「目視」とか「個人の感覚」って裁判を愚弄するのもいい加減にしてください!! つまり、レイタンスに「有害なレイタンス」も「有害でないレイタンス」も無いんですよね、水島部長さん。全て、南辰の独自の理論でしょ。
●ネズミ部長のオトボケ証言に裁判官も悲鳴!
鬼の弁護士はネズミ部長に質問しました。平成二十七年九月十五日に行われた現地見分での出来事についてです。水島ネズミ部長は打継ぎ部で分離しているコアを両手で押さえて「割れてませ~ん」と言っていましたが、すぐに割れていることがばれました。
「コアが抜かれた直後、「割れてませ~ん」と嬉しそうに大きな声で叫んでいましたね。あなたでしたね」
水島は無言。
「でも、あなたがその場で、コアを横にしたらぱっと割れちゃった。そういう経緯がありますよね」
水島証人は質問には答えず、「大覚さんが・・・」と何か弁解じみたことを言い出そうとすると、鬼川弁護士は苛立って言いました。
「いや、いいです。時間がないから。あなたがコアを置いた時には、コアはぱっと割れちゃったと、それだけはいいですよね?」
「・・・」
「返事してください」
水島はふてくされたように話し出しました。
「ですから、私どもが抜いた分には簡単に分離、密着・・・」
簡単な確認の質問に対して、まともに返答しようとしない水島証人の言葉をさえぎって、鬼川弁護士は反対尋問を続けました。
「そうすると、あなたは、打継ぎ部は割れないものと考えていたんですよね」
「簡単には分離しないものだと思っておりました」と水島。
「なぜ、そう思っていたんですか?」
「大覚さん側が抜いた分については、ハンマーで叩かなければ割れなかった」
「それを含めてみんな割れたでしょ」
「鉄筋のない部分では・・・」と、再び水島が質問を無視して勝手に意見を述べようとすると、鬼川弁護士が制止しました。
「質問をちょっと聞いてくださいよ。だから、あなたは、打継ぎ部は割れないものと考えていたんでしょ?」
「簡単に分離するものではないと考えていました」と水島。
「それはなぜそういう風に考えていたんですか?」
「打継ぎ部でコアを抜いたことはありませんし、感覚的にそういうふうに思っていただけです」
この、水島部長の返答はウソです。現地見分の前に、南辰は水島部長自らコア抜き実験をして、動画DVDを証拠として裁判所に提出していたからです。
鬼川弁護士もその事実を踏まえた質問を投げました。
「あなた自身は、打継ぎ部をきちんと処理して、レイタンスなどを取り除けば、打継ぎ部は一体化し、分離しないものと考えていたんですよね」
「いえ、コンクリートが一体化するというふうには考えておりませんでした。ある程度の接着力が働いて・・・」
水島の返答が、いつものごまかしであることが見え見えだったので、鬼川弁護士もつい興奮して、水島が話している最中に発言し、両者の声が重なってしまいました。これでは二人が何を話しているのか聞き取れません。すかさず、裁判官が割って入りました。法廷内に裁判官の甲高い声が響きました。
「うわゎ。あのう、重なってしまうと、もう速記がとれませんので。お互いに、質問は質問で最後まで、答えは答えで最後までやってください!」
ボクシングの試合中、クリンチ状態を注意するレフリーのようでした。
このような押し問答で、時間が無駄に費やされました。鬼川弁護士が証拠書類を出さずに、証人に質問しようとすると、すかさず南辰弁護士が、証拠を示して質問するように横やりを入れる場面もありました。これも、南辰弁護士が、時間を浪費するように企んでいたのです。
ファイト!(試合再開)
鬼川弁護士も苦笑いで反対尋問を再開しました。
「答えが長いのでね、もう簡単に答えてくださいよ。時間がないのでね。要するに、私が聞いているのは、打継ぎ部をきちんと処理して、レイタンスなどを取り除けば、打継ぎ部は一体化して分離しないと考えていたんじゃないんですか?」
「いえ…。ですから、今言ったように・・・」と水島がオトボケ返答を繰り返そうとすると、今度は、レフリー、いや、裁判官が見るに見かねた様子で、水島証人に言いました。
「あのね、いいですか。今、いろいろな事実が出てきているのでね、正直に言ってほしいんですよ」
裁判官にここまで言わせるネズミ部長。現地見分でも裁判官に注意されていましたっけ。ウソのオンパレード企業南辰を代表するネズミ部長水島に「正直さ」を求めるのは無理な話です。ここで「今、いろいろな事実が出てきているのでね」と裁判官がわざわざ述べているのは、すでに裁判所に提出されている南辰側の実験動画や書面は、裁判官も大覚側も見ていますから、この期に及んで、証人尋問の席で南辰の都合のいいようなことを作って証言しても通りませんよ、とたしなめられたのです。
裁判官はさらに続けて、水島に問いかけました。
「あのね、そちらはね、きちんとしているものは割れない。きちんとしてないものは割れると、そういうふうに考えていたんじゃないの? きちんとしていようが、していまいが割れるもんだと、そういうふうに当時、思っていましたか?」
現地見分の際、一本目のコアを手にした水島部長。大覚側の鬼川弁護士に「ちょっと見せて」と言われて、水島部長自身が分離させて、打ち継ぎ面を弁護士に示している。
分離したコアを周囲に見せる水島部長。南辰が目をふせたい事実が明らかになり、泣き出しそうな表情だった。
打ち継ぎ面全体に、べったりと堆積したレイタンス。平成二十七年九月十五日は、この裁判の結果を左右する重大な事実が明らかになったのだ。
鬼川弁護士が投げた質問は、裁判官が立ち会った現地見分で南辰の抜いたコアが割れた時、その場にいた水島工事部長は、コアの打継ぎ部は一体化して分離しないと考えていたかどうかということです。現地見分の前には、「打ち継ぎ部でコンクリートコアが分離する事はあり得ない」と豪語していたのですから、現地見分でコア抜き調査をした際に「コアの打継ぎ部は一体化して分離しない」と考えていたことは明らかです。それなのに、それを正直に認めようとしないのは、「適切に処理したコアの打継ぎ部は一体化して分離しない」ことは南辰にとって都合が悪いため、現地見分後に南辰が主張を変えたからです。
「打継ぎ処理をきちんとしていようが、していまいが割れるもんだと、そういうふうに当時、思っていましたか?」という裁判官の質問に対して水島は次のように答えました。
「そうではありません。きちんとしているものは、ある程度の接着力が残っているので割れないものだと思っていました」
水島が「打継ぎ処理をきちんとしたものは割れないものである」と現地見分の際には思っていたことがようやく確認されました。
「それはそうなんでしょ、当時はね。あくまで、当時はね…」と、裁判官も呆れて、半ば投げ捨てるように言いました。
ここで裁判官が「きちんとしていようが、していまいが割れるもんだと、そういうふうに当時、思っていましたか?」とわざわざ水島証人に質問しているのは、南辰にとって都合が悪い事実を曖昧なものにするために、現地見分の後、南辰が多くの建築専門家や学者を雇って、南辰に都合のいい意見書を書かせ、南辰に都合のいい主張を展開しているからです。つまり、「打継ぎ処理をしていようが、していまいがコンクリートは簡単に割れるものであり、基礎梁が一体化していなくても構造耐力には影響しない」という現在の主張への変遷があったことを明らかにしています。
南辰が当初、「打継ぎ処理をきちんとやっていれば、コンクリートは一体化し、割れない」という主張であったことを確認する証言をネズミ部長から引き出すまでに、開始から四十分以上が過ぎていました。持ち時間一時間の三分の二がすでに費やされてしまいました。時間がアッと言う間に過ぎ、鬼がネズミのシッポをなんとか捕まえる事がやっとできました。でも、他にも尋問しなくてはならないことが残っているのでした。それには、もう時間が・・・。
南辰のずさんなコンクリート工事は大量のジャンカを発生させた。ジャンカ・クラックなどのコンクリート不良は三千箇所以上確認されている。
コールドジョイント、異物混入、ジャンカが発生している。南辰のコンクリート工事はずさん極まりない。デタラメな工事だ。
●裁判を悪用し、法律を手玉にとるのは、北海電鉄の会長さん、南辰の社長さん、黒幕さんの指示ですか? 計画的企みを仕掛け、大覚を仕留める段取りをするために、ネズミ部長というヒットマンを出したのですね!陰謀・謀略ですね!
尋問が終わってみれば、準備していた四分の一も質問が出来ず、確認したかったことは、ことごとくはぐらかされてしまいました。証言をごまかし、すばしこく逃げ回るネズミ証人! それこそがこの日の水島工事部長と南辰側弁護士の作戦だったと思われます。ネズミ部長のシッポを掴むのに躍起になるあまり、もっと大きなネズミである南辰のシッポは捕えることができず、逃げ切られてしまったのです。あらためて、南辰は法律・裁判・弁護士を熟知し、裁判をかく乱するのに長けていることを思い知らされました。マフィアのような組織ですね。
そもそも、水島証人に対しては、南辰側の補修案および施工方法の妥当性について証言することが、裁判所から求められていました。裁判所が判決を下すには、どちらの補修方法および補修費用に妥当性があるかを裁判所が判断しなければなりません。南辰からは他に何人かの証人候補が申請されていましたが、裁判所が、補修費用の妥当性を確認するために、実務者である水島ヒットマンが選ばれたのです。水島ヒットマンは一審には一度も出てきていません。控訴審の途中から登場してきました。機会があれば、すかさず裁判をかく乱に導くことが水島部長の役目でした。
補修方法および補修費用について、南辰側に反駁(はんばく)するために、大覚は鬼川弁護士チームと何度も何度も打合せを重ねていました。
南辰側の鉄筋挿入による補修案、コッター補強による補修案がどれも有効でないこと、そして、大覚の補修方法・費用に妥当性があること、これらを明らかにすることが、鬼川弁護士の使命でした。
①南辰は打継ぎ処理をきちんとしていたのか?
②打継ぎ部に鉄筋を挿入する補修方法では耐力を回復できないこと。
③南辰が提示した新たな補修方法「コッター補強」では耐力を回復できないこと。
④大覚の補修費用の適切さ。一方、南辰の補修費用のデタラメさ。
ところが、南辰が通常行うべき打継ぎ処理を怠っていたことは、状況証拠から明明白白なのに、この点に膨大な時間を費やしてしまいました。①の「南辰が打継ぎ処理をきちんとしていたのか」という問題だけに終始してしまいました。
このため、②③④については、証人ヒットマンに質問すらできませんでした。ヒットマン部長、南辰弁護士の策略にはまってしまいました。
鬼川弁護士は、ずる賢く立ち回る証人ネズミを相手に大変な思いをしましたが、一方の南辰側藤野弁護士は、縦板に水を流すように、流暢(りゅうちょう)に質問をしていました。相当、裁判を熟知し、慣れているのでしょう。南辰の辻褄の合わないウソもデタラメが、あたかも事実であるかのように言いくるめられてしまうのでした。南辰側の弁護士さんはすごいですね。何かあったら、次は相談に乗ってくださいね。
梁底(はりそこ)に異物が混入し、錆びが発生している。木材などの異物がコンクリートに埋まっている箇所も多く確認されている。構造体の瑕疵を上げればきりがない。ずさんな施工をしすぎですよ、南辰さん。
構造体である基礎梁コンクリートに木片が埋まっている。生コンはJIS規格外の粗悪なコンクリートを使い、基礎のコンクリート工事ではデタラメな施工計画で何層にも打ち継ぎ、レイタンスの除去を行っていないにもかかわらず、「JASS5」に準拠した工事をしていたと、裁判でウソ・デタラメを言っていますね。おまけに、現場所長は生コン業者と共謀して裏金を得ています。このまま、すべての不正が闇に葬れると、今でも思っているのですか、南辰さん。
(覚くんの想い)
北海電鉄の会長さん、南辰の社長さん、こんなデタラメとウソが世の中で通ると思っているのですか。現実にあの瑕疵だらけの、お化け屋敷のようなマンションが建っているのですよ。地元では有名ですよ。大覚に対して、計画的に罠を仕掛け、陰謀、謀略を巡らせていましたね。何を企んだかわかりませんが、悪魔のような所業はやめてください。あなたの会社は上場していますよね。また、関西でも指折りの会社が、他人が一生懸命やっているものを手に入れるために、謀略を巡らせましたね。大津京ステーションプレイスを利用し、悪の種をばらまき、何年か後、刈り取る段取りをしましたね。そして、全ての罪を大覚に被せる段取りでしたね。その計画にはまっていたら、いま、大覚は大変なことになっていたでしょう。
南辰は、大覚が残代金の支払いを拒むために、難癖をつけているようなことIR情報に書き、ホームページで公開していますが、大覚が支払いをする用意があることは何度も伝えていました。ただ、手直し工事に着手すらせず、建物の完成も、引き渡しもしなかったのは南辰の方ですよ。
南辰が「支払う金が無いなら、四十九室を買い取る」と提案してきたこともありました。その提案は断りました。大覚は残高証明書まで示して、早く手直し工事をするようにお願いしました。内覧会も、言葉巧みに大覚社員を除け者にして勝手にやっただけですよね。入居が始まったという事実を作りたかっただけでしょ。大覚は、内覧会・入居を遅らせてでも、手直しをしてもらうように依頼しましたよね。しかし、お客様にもそれぞれご予定があり、その影響を考えて、一部の住戸の鍵の引き渡しを受けました。その後も各住戸の不具合は、南辰さんが責任をもって手直ししてくれるものだと信じていたのですよ。結局、南辰さんは、一切手直し工事をしてくれませんでしたね。追加・増減工事についての大覚との話し合いにも、一切応じてもらっていません。
一審判決後、残代金の支払いについて、弁護士同士で話し合いをしました。大覚社長も同席し、残代金の支払いについて合意し、遅延損害金の利率も下げることになりました。それなのに、支払い日の直前になって、支払期日を前倒しするように要求してきました。そんな突然の変更が一回、二回と続きましたが、そんな無理難題も大覚は承諾しました。ところが、大覚が振り込む直前になって、また支払い期日の変更を要求してきました。三回目です。ここまでくると、もはや、企業同士の合意とは言えません。南辰が残代金を受け取ったら都合が悪い事情があったとしか思えません。
証人尋問では、水島ヒットマンの術中にはまり、鬼川弁護士は南辰の補修方法について何も聞き出すことはできませんでした。しかし、南辰が提出した最初の補修方法にしても、新たに提出してきた「コッター補強」による補修方法にしても、「JASS5」で求められている「鉄筋コンクリート造ではコンクリートが一体化していなければならない」ことを全く無視した補修方法です。施工計画もデタラメです。ヒドイ会社ですね。
南辰が打継ぎ処理を怠り、一体化していない基礎梁を造り、建築基準法違反だらけの危険なマンションを建てた罪を許すことはできません。南辰が示した補修方法は、どちらも自らの罪を真摯に認めようとせず、学者を動員して「コンクリートが一体化していなくても建物は安全だ」と目先だけの安全性をアピールし、小手先だけの補修方法を示しているに過ぎません。
証人尋問はあっけなく終わってしまいました。覚くんたちが計画していた内容ではありませんでした。証人尋問が終わった後に、裁判官が言った言葉に、覚くんは背筋が凍る思いをしました。
その裁判官の言葉とは・・・?
次回明らかにします。乞うご期待!!