<瑕疵(かし)- 1 : 甲第1 3 8 号証の構造計算書に関する事>
1. 設計用地震力( せん断力) の割増の欠如 本件建物は、地階から2 階まで、3 層分の吹抜け空間がある特殊な建物である。当該部分には、1 階及び2 階の床構面が無いため、梁組の剛性、及び柱、並びに耐震壁のせん断耐力が重要となる。 確認申請の構造計算書、乙第2 6 号証では、主要構造部材の断面計算に際し、水平荷重時の設計応力を、X ,Y 方向共に、5 %の割増を行っている。これは、主要構造部材のせん断強度に余裕を持たせる為のものであり、また、机上の構造計算によるリスクを回避する為の安全率でもある。 然しながら、原告から提出された甲第1 3 8 号証の構造計算書では、「元設計では荷重条件の変更に対応出来る様に、断面算定時に設計用地震力を1 .0 5 倍に割増して設計していたが、今回の検討では割増を行わない。」などとしている。本件建物の用途は共同住宅である為、用途を変更する場合( 荷重条件の変更)、及び、特に荷重が増える場合には、構造再計算と共に、確認申請の再申請を行わなければならない。 よって、水平荷重時の設計応力の割増は、荷重条件の変更を前提とするものでは無く、甲第1 3 8 号証の構造計算書は、少なくとも乙第2 6 号証の構造計算書と同じ条件で計算する必要がある。
2. 保有水平耐力計算について 甲第1 3 8 号証の純ラーメン構造( X 方向)の保有水平耐力計算の結果は、必要保有水平耐力( Q u n ) と保有水平耐力( Q u )の検定比が1 階から1 4 階まで全て1 .0 であり、余力が全くない状態である。 例えば、表1 階の保有水平耐力と必要保有水平耐力の差は、Q u - Q u n = 5 7 2 2 0 - 5 7 0 3 0 = 1 9 0 k N 。 水平耐力は、各階にかかる累積の荷重に係数を乗じて算出する為、次式の通り、逆算すれば、上述の水平耐力の差を荷重に置き換えることができる。 Qu n=D s・Fe s・Qu d D s=0. 3 Fe s=1 . 0
よって、1 階の累積荷重の余力は、6 7 .5 t f であり、建物重量が、計算仮定条件よりも6 7 .5 t f 増えれば、甲第1 3 8号証の保有水平耐力計算は成立しない。 平成2 5 年2 月2 6 日付判決書面7 頁( イ)の記載事項、及び乙第6 2 号証の通り、現状の建物には、確認申請時の構造計算の際には考慮されなかったコンクリートの増し打ちがある。当該増し打ち重量は、合計1 0 2 .9 4 t f であり、上記6 7 .5 t fを上廻る。よって、本件建物は耐震性能が欠如している。 尚、コンクリート荷重の未算入については、乙第4 4 号証の1~ 3 で指摘する通り、平成2 1 年7 月1 1 日に屋上で打設された9 . 4 平方メートル( 9 . 4×2 4 kN×0 . 1 0 1 9 7÷1 0 0 0≒2 3 t f )のコンクリートがある。これらのコンクリートの打設箇所が、屋上で打設されたものである限り、増し打ち重量に算入されなければならない。 ■岩山健一氏 プロフィール■
一級建築士 株式会社日本建築検査研究所 代表取締役 ■主な出演番組■ テレビ東京「完成!ドリームハウス」 テレビ朝日「スーパーモーニング」 テレビ朝日「やじうまプラス」 TBS「みのもんたの朝ズバッ」 KTV「痛快エブリデイ」
阪神淡路大震災をきっかけに住宅の欠陥検査に着手。平成10年日本建築検査研究所を立ち上げ、市場における欠陥住宅の発生予防とその解決および紛争の支援を行っている。不動産業者や建設業者等との一切の利害関係をもたない消費者の味方として、これまでに2000件を超える手抜き・欠陥住宅の回復、救済を多数手掛ける。 (鈴木教授への質問) ■鈴木計夫工学博士 プロフィール■
大阪大学名誉教授 吉林建築工程学院名誉教授 元 福井工業大学教授(財)大阪建築防災センター 構造計算適合性判定業務 監視委員会 委員長 建築確認検査業務 監視委員会 委員長 日中建築構造技術交流会 名誉会長 (社)日本建築学会 司法支援建築会議 運営委員 大阪地方裁判所(最高裁判所人事) 専門委員 NPO法人 PC建築技術支援センター 理事長 (一社)関西建築構造設計事務所協会 名誉顧問 和歌山県建築構造設計協会 名誉顧問 |
1. 設計用地震力( せん断力) の割増の欠如
当初の構造計算書(左)
南海辰村建設が再計算した構造計算書(右)
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2. 保有水平耐力計算について
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南海辰村建設が再計算した構造計算書(甲第138号証)
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