欠陥建物が生み出される背景

今回は欠陥建物が生み出される背景について考えてみたいと思います。

今や後を絶たない欠陥住宅が大きな社会問題になっていますが、欠陥建物はどのように生み出されるのでしょうか。建築関係者以外の人は、内外装の仕上げ材やデザインに興味はあっても、建築の技術的なことにまで興味を持って理解している人は皆無です。つまり、建築の専門知識がある人でなければ建物に欠陥があるかどうかを見抜くことなどできません。

 そのため、施工会社が「どうせ相手は素人だから、気付かれることはないだろう」と素人でもわかる見た目の設備、内外装、インテリアなどには手を抜かない一方で、見た目にはわからない建物にとって重要な構造体や下地材などで手抜き工事をしているケースは容易に考えられます。

また、工事の元請け>下請け>孫請けという構図の中で、下請け・孫請け業者も、利益を上げるため、ついつい手抜き工事をしてしまうのです。そして、何も知らない事業主は契約金額をそのまま払ってしまうのです。その結果として、エンドユーザーである住人が被害を被ることになるのです。

おそらく、住人だけでは欠陥(瑕疵)を見つけることはできず、地震や台風などの災害に遭って、初めて事の重大さに気付くことになるのでしょう。当然、災害に遭ってから気付いても取り返しがつきません。そこまでの大事にならなかったとしても、数年で修理しなければならない部分が多くなり、施工会社に相談すれば、経年劣化だから仕方ないなどと説明されて終わるのです。

被害にあっている人々の多くは、問題の本質がわからないまま、最初の施工会社に問題解決を頼むしかなく、悪質な施工会社は、自分たちの非を認めるはずはなく…誤魔化され、行き当たりばったりの安易な方法で修理されたり、高額な費用を払って修理するしかないのです。

欠陥建物が生み出されるもう一つの背景に、元請けの施工会社が能力のない下請け会社に工事をまる投げするケースがあります。

震災で大きな被害のあった建物を調べてみると、工事を請負った元請会社が実際には別の下請け会社に工事をまる投げしていたため、ずさんな工事が行われたことが原因で地震による大きな被害を受けたこともありました。

大手の施工会社や知名度のあるハウスメーカーだから安心だと思って、契約しても実際には下請け会社にまる投げされていることもあるのです。(もちろん、すべての大手施工会社やハウスメーカーが工事をまる投げしている訳ではありませんし、そうでないと信じたいです)それに、建設業法で工事のまる投げは禁止されています。

例えば、ある一定レベル以上の施工技術が必要な建物を元請け施工会社が工事を請負い、実際には一定レベルにも満たない施工会社に工事をまる投げしたとすれば、どうなるでしょうか。

 上述しましたような背景のもとに、現在もこれからも欠陥建物が生み出されていくのです。建築業界全体からすれば、社会により安全でより暮らしやすい建物を提供すべく責任とプライドを持って仕事に取り組まれている方々も多くいるので、誰もが欠陥建物の被害に遭うとは限りませんが、安全で暮らしやすい社会をつくるためにも欠陥建物・欠陥住宅を無くす仕組みや制度をみんなで考えていく必要があると思います(被害に遭ってからでは遅いですから)。

先日、弊社の訴訟専用サイトのトップページに「欠陥建物被害にあわない方法」を掲載しましたので、是非ご覧になってください。

(社員S)

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