この欠陥問題が住民運動に発展しなかった背景について

今日は、この欠陥マンション問題がマンション入居者による訴え、いわゆる住民運動に発展しなかった背景について述べたいと思います。

 

昨年12月掲載のブログ記事「合意解除による買戻しと理不尽な仮差押え」では、弊社がマンション入居者の要望に応じ、マンション売買契約を解除し、売買代金を返還するに至ったいきさつについてお話ししました。今日は、そこでは触れていなかったウラ話も交えてもう少し詳しく述べたいと思います。

 

マンション入居者への説明会において、入居者の方々の中には自分たちで弁護士に依頼して、売主の大覚と欠陥マンションを建てた南海辰村建設を訴えたいという意見がありました。
その場に居合わせた弊社の第一審弁護士は、住民側から訴訟を起こされると、自分の仕事が増え、受け持っている裁判(大覚 対 南海辰村建設)がやりにくくなるとの理由で、入居者の方々に知り合いの弁護士を紹介すると言いだしました。

 

実際に説明会の後、弊社の第一審弁護士は住民代表の方々に弁護士を紹介しております。ただし、その弁護士は指定した日時に一度だけ来たきりで、後の会合には、スケジュールが合わないなどといろいろな理由をつけて、来ることはありませんでした。
そんな弁護士を不審に思われた住民の方々は、その弁護士との接触を断ち、新たに別の弁護士を探されていたようでした。

 

そうこうしているうちに時間だけが過ぎてゆき、地元企業である弊社は、毎日顔を合わせ、互いに挨拶をし合うマンション入居者の方々が、構造的に問題のある欠陥マンションを買ってしまった事やそこに住んでいる不安に対して、どうやって解決したらいいのか悩み苦しんでいる姿を目の当たりにして、地元企業として誠意ある行動を起こさねばという道義的理由から合意解除を行う決定をしました。

 

当時、弊社は第一審弁護士を信頼していましたので、第一審弁護士の方針に口出ししないほうがよいと思っていました。しかし、今考えてみると、住民側から訴訟を起こされると、自分の仕事が増え、受け持っている裁判(大覚 対 南海辰村建設)がやりにくくなるとの理由で、入居者の方々に知り合いの弁護士を紹介した訳ですが、第一審弁護士は一体何がしたかったのでしょうか・・。
ただ単にマンション入居者の訴え(住民運動)が起きないように時間稼ぎをしていただけのようにも思えます。

 

ちなみに、第一審弁護士は、マンション住人に対し合意解除を行うことで裁判が弊社に対して有利に働くと言っていました。また、裁判には「勝てる、勝てる」と言っていましたので「合意解除を行っても、最終的には南海辰村建設から損害賠償金がとれるのだから、合意解除により返還する売買代金は南海辰村建設によって補償されることになる」とも言っていました。そして、マンション売買契約の解除に伴う交渉、手続きについては第一審弁護士の主導によって行われ、登記手続きをした司法書士は第一審弁護士の紹介する人物でした。

 

しかしながら、第一審判決では弊社の主張はほとんど認められず、納得のいく判決は得られませんでした。第一審の結果については、社員一同、たいへん悔しい思いをし、今でもやりきれない気持ちでいっぱいです。

 

後に、控訴審の担当弁護士にこれらのいきさつについてお話しすると、合意解除はしないほうがよかったと言われました。合意解除を含めマンション入居者への対応は、大覚一社で対応するのではなく、南海辰村建設も交えて対応すべきだったと言われました。
さらに、合意解除はせずにマンション入居者から提訴があったほうが、今回の欠陥問題が解決に向けて進展したかもしれないとも言われました。この場合、売主である弊社も提訴される訳ですが、そのほうが弊社も南海辰村建設に対して戦いやすかったということでした。(第一審弁護士は、合意解除を行うことで裁判が弊社に対して有利に働くと言っていたので、まったく見解が異なります。)

 

いずれにしましても、合意解除を行ったことが訴訟にどう影響したかは別としまして、弊社は地元企業としての責任ある対応として、マンション入居者の要望に応じ合意解除を行ったことが間違っていたとは思っておりませんし、今でもそうすべきだったと考えております。

 

上記のような経緯で、マンション入居者に対し合意解除を行ったことにより、マンション入居者による訴え(住民運動)には発展しませんでした。

(社員T) 

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