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排水設備の不備

地下ピットの排水

排水釜場(かまば)に地下壁からの漏水等が溜まり、ヘドロ状で異臭がする。
不衛生極まりないし、駐車装置にも悪影響を及ぼす。

機械駐車装置のある地下ピットは、地下壁(基礎梁)に囲まれた12箇所の区画である。
本件建物の地下ピットは巨大な基礎空間である。だからその底に集水ピットを設けた、これが、本件建物の「釜場(かまば)」である。

※ 釜場(かまば)は、ポンプアップによる排水効率を上げるために、排水を一箇所に集める桝で、地下ピットや基礎底版に限らず掘削工事においても設けられる。

(1)釜場(かまば)

釜場(かまば)が、各ブロックごとに12箇所ある。しかし排水ポンプが設けられているのは貯水槽だけで、各釜場(かまば)には何も無い。

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地下ピット排水の概念図

釜場(かまば)というものは、本来ポンプアップの効率化のためにある。ポンプが無ければ単なる「泥溜」でしかない。

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「泥溜」でしかない「釜場」

泥溜は文字通り「泥」を溜める仕掛けだが、地下7mのこの場所に果たして泥が存在し得るかどうか疑問ではある。仮にこの釜場が「泥溜」として機能したとすると、泥は定期的に点検清掃しなければならないが、この位置に、スコップやバケツを持って到達するには、機械駐車装置のパレットに載るしか方法は無い。つまり、清掃員は、常識的にはこの釜場(泥溜)には行き着けない。

そしてこの釜場(泥溜)に滞留しているのは、褐色のエフロレッセンス(※注)を湛えた漏水である。

(※注) エフロレッセンスとは、コンクリート中の可溶性物質やコンクリート周辺に存在する可溶性物質が、水分とともに貫通したひび割れを通ってコンクリート表面に移動し、水分の散逸や空気中の炭酸ガスとの反応によって析出したもの。


契約図の雨水排水計画図には、立体駐車場ピットの釜場間を実線にてVP100φ(塩化ビニール管)で接続するよう記載されています。
また、ガソリントラップ(※注:契約図では「油水分離槽」と書かれています)は現状とは別のピット内に設置計画されており、現状よりも点検、清掃がし易い様に設計されていました。

当初契約図通りに施工しておれば、現状の様な各ピット間に梁を貫通し通水パイプで溝を繋ぐような施工方法では無く、逆勾配の為に水が溜まるような状態には決してなりませんでした。

(※注) ガソリントラップとは、ガソリンスタンド・駐車場・洗車場などに設置され、浮上油を分離し排水中への流出を防止すると同時に沈殿分離により土砂等を捕集して下水管や公共側溝の目詰まりを防止することがその目的。

契約図

(契約図:工事請負契約に添付する図面。
施工者は契約者に対し、この図面の通りに工事を行わなければならない。)
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(画像をクリックすると拡大します)


契約図を元にした断面図

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(画像をクリックすると拡大します)


竣工図

(竣工図:工事中に発生した設計変更などを図面上でも修正し、竣工した建物を正確に表した図面)

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(画像をクリックすると拡大します)

竣工図を見ると契約図にあった埋設管(VP100)が無くなっている事が分かる。


(2)排水溝・貫通孔

各ブロックの泥溜には、外周壁沿いの溝からエフロ(※注)混じりの漏水が流入している。
この地下ピットの排水方法を推定するに、東側(下図面の右方向)を水上として、西に向かって自然勾配で排水を誘導し、ガソリントラップを経て、地下貯水槽に流入させる計画である。

※注) エフロ、またはエフロレッセンスとは、コンクリート中の可溶性物質やコンクリート周辺に存在する可溶性物質が、水分とともに貫通したひび割れを通ってコンクリート表面に移動し、水分の散逸や空気中の炭酸ガスとの反応によって析出したもの。

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⑤通貫通孔を④通側から見る
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排水溝が逆勾配

隣の区画へ誘導するための貫通孔の位置を錯誤し、それをそのままに放置して斜め上に貫通しなおした状況も確認できた(放置された貫通孔の対側がどうなっているかは不明)。

第一審の判決では、地下ピットの釜場に接続された排水管がなく、設置された排水溝が逆勾配であることから釜場、排水溝に泥土が溜まりっ放しになることについては瑕疵(かし)に当たると認定された。

「しかし、排水溝ではなく、排水管を設置することが設計上重要であった。又は排水管を設置すべきところ排水溝を設置したことによって特に不都合が生じるという事実を認めるに足りないから、瑕疵(かし)に当たるとまでは言えない」という判決であった。

しかし事実、ピット間に設けられた貫通孔のレベルがピットスラブよりも高いレベルにあたるために、ピットスラブには常時水が溜まりっ放しになっている。

また、瑕疵(かし)に当たると認定された逆勾配の排水溝のせいで隣接したピットに水が自然と流れていかない。

この状態を考慮しないで、現状のままで問題がないという判決は見当違いもはなはだしい判決である。

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ヘドロ状の水が溜まった排水「釜場」
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ヘドロ状の溜まり水で異臭を放つ側溝


この状況が屋外であればまだしも、上部に住居のある建物の下部であり、その衛生状態に大きな懸念がある。
いたるところで排水が滞っている「釜場」には、ボウフラが発生するだろう。
加えてこの地下水には硫酸イオン等も含まれている。
機械駐車装置にとって無害であるはずもない。

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排水溝と機械駐車装置のチェーン

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溝からあふれでてきた漏水
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機械脚部のアンカーが発錆

駐車ピットの漏水は、排水溝から機械駐車装置の足元にまで溢れてくるようになった。機械支柱の足元のアンカーに、発錆が始まっている。


雨水貯水槽の排水

排水ポンプの設置不良で、正常な排水が出来ておらずポンプの点検には危険を伴い、雨水放流管から貯水槽への放流音は凄まじいものがある。

先に述べたように、本件建物及びその周辺の雨水は、地下ピットを利用した「貯水槽」に一旦集められ、排水ポンプによって南側の道路側溝に放流される。

下図(雨水排水竣工図)で示されるように、この貯水槽には、北側通路・南側車路等屋外の雨水だけでなく、建物の屋根やバルコニー・廊下からの雨水排水も放流されている。そして駐車ピット内部の排水(漏水混じりの地下水)も、ガソリントラップを経て、この貯水槽に放流されている。

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つまり、この貯水槽には

・本件建物の敷地に降った雨水の殆ど
・地下ピットの漏水・湧水
・受水槽のオーバーフロー水

等が集中して排水されている。

(1)排水ポンプ

これだけの排水が一か所に集中するため、その大容量を処理する排水ポンプの信頼性は、相当に重要なものとなる。

・ 排水ポンプは、本件建物のように1箇所集中という大きなリスクの無い場合でも2台設置して交互運転とする。これは1台のみだと故障時のリスクが高すぎるからである。
・ 排水量が過大となった場合には、2台同時運転できるようなシステムを組む。
・ 排水異常の際の警報設備を設置する。
・ メンテナンスを充分に行なう。

など、危機回避策が何重にも備えられるのが通常である。

(1)-ⅰ.排水ポンプの設置不良

ところが、点検したところ、すでに2台の排水ポンプのうちの1台が傾いており、貯水量はごく僅かであるにもかかわらず、配管接続部から高圧の排水が吹き上がった。誤作動である。
少なくともこのポンプからの排水の一部は排水配管に流入せず、貯水槽内に撒き散らされているのである。

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傾いて設置されている
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排水が吹き上がった

(1)-ⅱ.排水ポンプはメンテナンスできない

おまけに、この排水ポンプは、常識的にはメンテナンスができない。排水ポンプの設置場所に、安全に行き着くことができないからである。

次図は、本件建物の断面図である。
貯水槽の深さは1SL(1階スラブレベル)から7m程度あり、この建物の基準階からすれば2.5層分に該当する。その底の、更に深く掘り下げた釜場(かまば)にポンプを据えてある。だからメンテナンスを行なうには、地下7m以上の深さにある釜場まで行き着かなければならない。

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